ヒナタイノコヅチ

ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌、学名: Achyranthes bidentata var. fauriei)は、ヒユ科イノコヅチ属多年生草本。日当たりのよい道端原野に生える雑草である。

ヒナタイノコヅチ
ヒナタイノコズチ
愛媛県広見町、2001年10月8日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ヒユ科 Amaranthaceae
亜科 : Amaranthoideae
: イノコヅチ属 Achyranthes
: イノコヅチ(広義) A. bidentata
変種 : ヒナタイノコヅチ
A. b. var. fauriei
学名
Achyranthes bidentata
Blume
var. fauriei
(H.Lév. et Vaniot)[1]
シノニム

Achyranthes bidentata
Blume
var. tomentosa
(Honda) H.Hara
Achyranthes fauriei
H.Lév. et Vaniot

和名
ヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)、ヒナタイノコズチ、オニイノコヅチ

名称

和名は、イノコヅチ(ヒカゲイノコヅチ)よりも日当たりのよい場所に生えることに由来する。イノコヅチは漢字で「猪子槌」と書き、茎の節にある太い膨らみの形が、イノシシの子どもの大きな膝頭と、物を打ちたたく道具であるに例えられたところから来ている[2][3]

実は、衣服によくつくことから「ひっつきむし」などと呼ばれる[4]

分布・生育地

中国および日本に分布する。日本では、北海道の一部、本州四国九州に生える。各地の山野、道ばた、庭や空き地など、日当たりの良いところに自生する[5][2]

特徴

ヒナタイノコヅチの果穂
(茨城県常陸太田市 2022年9月)

は地中深くに伸び、まばらにひげ状に出ていて[5]、引き抜きにくい。

草丈は50 - 100センチメートルに生長する[2]は丸くなく角張った方形で、節が高く、節で対生に枝を出す[5][2]対生、楕円形、葉先は尖り、表面にまばらに毛がある[5]

期は夏(8 - 9月)で、茎の枝先に穂状花序で、目立たない緑色小花を咲かせる[5][2]花びらはなく、5本の雄しべがある[2]

秋に結実し、果実は3個の針状の苞に包まれ下向きに下がる[5]。苞の先端が鋭く尖っており、人の衣服の体に付着し運ばれて散布される[5][2]

とてもよく似た類似植物に、半日陰に多くややほっそりしたヒカゲイノコヅチがあり、ヒナタイノコヅチと混生していることも多く区別が難しい[6]。ヒカゲイノコヅチは葉質が薄く、毛が少ないのに対して、ヒナタイノコヅチでは、茎が太くややがっちりしていて毛が多く、葉は厚く尖っていて、花が密につき花柄が太くて短いことで区別される[5][7][4][6][8]

利用

本種または A. bidentata(本種の基本種)のを、晩秋に地上部が枯れたはじめた頃に採取して、水洗いして天日乾燥させたものが、牛膝(ごしつ)という生薬になる[5]。牛膝は、根が太く多肉質のが良品とされている[5]。最も良質なのは中国産の川牛漆(せんごしつ)といわれており、日本では、ヒナタイノコズチのうち、太い根をもつ系統を選んで栽培されている[5]

期待される薬効は、浄血、月経不順利尿腹痛関節痛強壮、産前後の諸病などで、5 - 8グラム (g) の根を水400 ccで半量になるまで煎じた液を、1日3度分服することで利用される[5]。乳房の腫れには、煎液または生葉汁で湿布する利用方もある[5]。牛膝は牛膝散折衝飲などの漢方方剤に使われる。

脚注

  1. 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)”. 2012年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月26日閲覧。
  2. 田中修 2007, p. 158.
  3. 亀田龍吉 2012, p. 92.
  4. 亀田龍吉 2012, p. 93.
  5. 馬場篤 1996.
  6. 稲垣栄洋 2018, p. 175.
  7. 田中修 2007, p. 159.
  8. 菱山忠三郎 2014, p. 161.

参考文献

  • 稲垣栄洋『ワイド判 散歩が楽しくなる 雑草手帳』東京書籍、2018年5月22日、174 - 175頁。ISBN 978-4-487-81131-1。
  • 平野隆久写真『野に咲く花』林弥栄監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、1989年、354 - 355頁。ISBN 4-635-07001-8。
  • 伊藤ふくお写真、丸山健一郎文『ひっつきむしの図鑑』北川尚史監修、トンボ出版、2003年、66 - 67頁。ISBN 4-88716-147-6。
  • 岩瀬徹『形とくらしの雑草図鑑 : 見分ける、身近な280種』全国農村教育協会〈野外観察ハンドブック〉、2007年、34頁。ISBN 978-4-88137-135-0。
  • 亀田龍吉、有沢重雄『花と葉で見わける野草』近田文弘監修、小学館、2010年、176頁。ISBN 978-4-09-208303-5。
  • 亀田龍吉『雑草の呼び名辞典』世界文化社、2012年2月20日、92 - 93頁。ISBN 978-4-418-12400-8。
  • 田中修『雑草のはなし』中央公論新社〈中公新書〉、2007年3月25日、158 - 159頁。ISBN 978-4-12-101890-8。
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光舎、1996年9月27日、24頁。ISBN 4-416-49618-4。
  • 菱山忠三郎『「この花の名前、なんだっけ?」というときに役立つ本』主婦の友社、2014年10月31日、161頁。ISBN 978-4-07-298005-7。

関連項目

外部リンク

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