ヒタキ科

ヒタキ科(ヒタキか、学名 Muscicapidae)は、鳥類スズメ目の科である。

ヒタキ科
キビタキ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : スズメ亜目 Passeri
小目 : スズメ小目 Passerida
上科 : ヒタキ上科 Muscicapoidea
: ヒタキ科 Muscicapidae Fleming, 1822
学名
Muscicapidae
シノニム

Muscicapinae

和名
ヒタキ
英名
Chats
Flycatchers
亜科
  • ヒタキ亜科 Muscicapinae
  • アオヒタキ亜科 Niltavinae
  • ヨーロッパコマドリ亜科 Erithacinae
  • ノビタキ亜科 Saxicolinae

ヒタキ(鶲)と総称されてきたが[1]、100種以上がツグミ科から移され、その中にはコマドリ類・シキチョウ類・ルリチョウ類などもいる。英語では、従来ヒタキ科に含まれていた種を flycatchers、ツグミ科から移された種を chats と区別するが、これらは自然分類ではない。

特徴

旧大陸オーストラリア区の中低緯度に生息する。

(くちばし)は横に扁平で、基部が太く剛毛が生えている。

森林に住む。枝の上に止まり、飛ぶ虫に向かって飛び上がり空中で捕食し、元の枝に戻る「ヒタキ型」給餌をする。

系統と分類

系統樹は Sangster et al. (2010)[2]; Zuccon & Ericson (2010)[3]より。1–12 は Zuccon & Ericson による仮の系統名である。

ヒタキ科 s.S&A

ツグミ科 Turdidae

ヒタキ科
ヒタキ亜科
 1 

ムジヒタキ属 Alethe

 2 

ヒタキ族 Muscicapini

 3 

シキチョウ族 Copsychini

 4 

アオヒタキ亜科 Niltavinae

 5 

ヨーロッパコマドリ亜科 Erithacinae

ノビタキ亜科
 6 

マミジロミツリンヒタキ属など

 7 

コマドリ属など

 8 

サヨナキドリ属など

 9 

ルリビタキ属など

 10 

ルリチョウ属など

 11 

キビタキ属など

 12 

サバクヒタキ属など

ヒタキ科はツグミ科と姉妹群であり、これら2科でヒタキ上科の大半を占める。ヒタキ科の中での系統位置が不明なムラサキツグミ Grandalaイワトビヒタキ Pinarornis はツグミ科だとする説もある。

ヒタキ科は従来はヒタキ亜科 Muscicapinae とノビタキ亜科 Saxicolinae に分けられ、英語ではそれぞれ flycatcherschats と総称されてきた(日本語では明確な呼び分けはない)。ヒタキ亜科は伝統的なヒタキ科で、ノビタキ亜科は Sibley & Ahlquist (1990) によりツグミ科から移された亜科だった。しかしそれらは多系統であり、Sangster et al. により4亜科に再編された。おおよそ、旧ヒタキ亜科は現在のヒタキ族・アオヒタキ亜科・ノビタキ亜科の一部 (Clade 2, 4, 6, 11)、旧ノビタキ亜科は現在のシキチョウ族・ヨーロッパコマドリ亜科・ノビタキ亜科の大半 (Clade 1, 3, 5, 7, 8, 9, 12) にあたる。

ヒタキ亜科には2つの族が含まれる。Sangster et al.ムジヒタキ属 Alethe を仮にシキチョウ族に含めたが、Zuccon & Ericson はヒタキ亜科の基底で分岐したとしている。

ノビタキ亜科はヒタキ科最大の亜科で、族は設けられていないが、Zuccon & Ericson は7つの系統に分けている(Sangster et al. は部分的に異なる9つの系統に分けている)。

歴史

Hartert (1910) は拡大されたヒタキ科 Muscicapidae を提唱した。ヒタキ科にはヒタキ亜科・ツグミ亜科など10前後の亜科が置かれ、それらは Amadon (1957) や Wetmore (1960) により個別の科となった。ただし当時は、ヒタキ科には flycatchers のみがあり、chats はツグミ科ノビタキ亜科 Saxicolinae とされていた。なお、ツグミ類 (thrushes) はツグミ科ツグミ亜科 Turdinae とされていた。

Sibley & Ahlquist (1990) は、ノビタキ亜科はツグミ亜科よりもヒタキ科に近縁だと考え、それらをヒタキ亜科の族とした。ツグミ亜科もヒタキ科に含め、拡大したヒタキ科を次のように分類した。

  • ツグミ亜科/ツグミ科 Turdinae (thrush) ≒ 現在のツグミ科
  • ヒタキ亜科/ヒタキ科 Muscicapinae ≒ 現在のヒタキ科
    • ノビタキ族/ノビタキ亜科 Saxicolini (chats)
    • ヒタキ族/ヒタキ亜科 Muscicapini (flycatchers) ≒ 以前のヒタキ科

のちに、彼らの亜科は科、族は亜科として扱われた。つまり結局、ノビタキ亜科がツグミ科からヒタキ科に移されたことになる。ただしムジヒタキ類 (alethes, 現在のムジヒタキ属 Aletheマミジロムジヒタキ属 Pseudalethe)・コバネヒタキ類 (shortwings, 現在のシロボシコバネヒタキ Heteroxenicusコバネヒタキ属 Brachypteryxセレベスコバネヒタキ Heinrichia) は彼らによりノビタキ類からツグミ類に移され、ツグミ科にとどまった。

しかしこれらの亜科は多系統であり、Beresford (2003) や Voelker & Spellman (2004) により修正され、Sangster et al. (2010)[2]により4亜科に再編された。ヒタキ科の範囲も変更され、Sibley & Ahlquist (1990) がノビタキ類からツグミ類に移した属はヒタキ科に戻され、さらに、伝統的にツグミ亜科に含まれていたルリチョウ属 Myophonusイソヒヨドリ属 Monticola もノビタキ亜科に移された。

属と種

種は国際鳥類学会議 (IOC)[4]による。属は Sangster et al. (2010)[2](一部は Zuccon & Ericson (2010)[3])に基づき以下の修正をした。

  • ミツリンヒタキ属 Rhinomyias からマミジロミツリンヒタキ属 Vauriella を分離し、残りはアイイロヒタキ属 Eumyiasヒメアオヒタキ属 Cyornis に移した。ただし系統位置が確定していない数種は、アオヒタキ亜科内の incertae sedis とし、2名法の属名は暫定的に変更せず Rhinomyias に留めた。
  • 旧コマドリ属 Erithacus の大半と旧ノゴマ属 Luscinia を、コマドリ属 Larvivoraサヨナキドリ属 Luscinia ノゴマ属 Calliope に再編し、オリイヒタキHodgsonius をサヨナキドリ属に統合した。
  • コシアカシキチョウTrichixosインドヒタキSaxicoloidesシキチョウ属 Copsychus に統合した。
  • ルソンカワビタキ属 RhyacornisシロボウシカワビタキChaimarrornisジョウビタキ属 Phoenicurus に統合した。
  • イワビタキ属 CercomelaミヤマイワビタキPinarochroa を含む)・アリヒタキ属 MyrmecocichlaPentholaea 属を含む)・マミジロサバクヒタキ Campicoloidesアカハラガケビタキ Thamnolaea の一部をサバクヒタキ属 Oenanthe に統合した。
  • コビトアオビタキMuscicapellaキビタキ属 Ficedula に統合した。
  • ガケビタキ属 Thamnolaea の一部をイソヒヨドリ属 Monticola に移した (Zuccon & Ericson による)。系統位置が確定していない1種はノビタキ亜科 Clade 12 内の incertae sedis とし、2名法の属名は暫定的に変更せず Thamnolaea に留めた。
  • メジロアオヒタキ属 Dioptrornis・チャビタキ属 BradornisシロハラクロヒタキSigelusクロヒタキ属 Melaenornis に、ヤブゴマドリ属 ErythropygiaクロヤブコマCercotrichas に統合(再統合)した。この広義のクロヒタキ属・広義のヤブゴマドリ属は単系統ではないが、属の再編に必要なだけの情報が不足しているため、分割されず保持された。

科の範囲と亜科分類は Sangster et al. によるが、部分的に Zuccon & Ericson の系統に基づいた修正がある。また近年ツグミヒタキ属 Cossypha から分割された2つの単型属はツグミヒタキ属と同じヨーロッパコマドリ亜科に置いた。

46属317種。

ヒタキ亜科 Muscicapinae

8属65種。

アオヒタキ亜科 Niltavinae

5属44種。

オオルリ

ヨーロッパコマドリ亜科 Erithacinae

10属36種。

ノビタキ亜科 Saxicolinae

18属168種。

亜科不明

4属4種。

出典

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.