ニシイワシ

ニシイワシまたはヨーロッパマイワシ(European pilchard)は、条鰭類で、サルディナ属単型である。若い個体は、サーディンと呼ばれる多くの種の一つである[2][3]大西洋北西部、地中海黒海の水深10-100mの範囲でみられる[1]プランクトン性の甲殻類を主な餌とし[4]、長さは27.5cmになる。生涯に何度か産卵し、各々のメスは合計で5万から6万個の卵を産む[4]

ニシイワシ

保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 魚上綱 Pisciformes
: 条鰭綱 Actinopterygii
上目 : ニシン上目 Clupeiformes
: ニシン目 Clupeiformes
亜目 : ニシン亜目 Clupeoidei
: ニシン科 Clupeidae
: サルディナ属 Sardina
(Antipa,1904)
: ニシイワシ S. pilchardus
学名
Sardina pilchardus
(Walbaum,1792)
シノニム
  • Alosa pilchardus
  • Clupea pilchardus
  • Clupea harengus pilchardus
和名
ニシイワシ
ヨーロッパマイワシ
英名
European pilchard

記載

ニシイワシは小型から中型の長細い形で、ニシンに似た魚である。腹びれ背びれのすぐ下から始まる。尻びれ軟条の最後の2つは、残りのものよりも大きい。上半分は緑色かオリーブ色で、側面は金色、腹側は銀色である[2]

分布と生息

大西洋北西部、地中海、黒海に分布する。アイスランドノルウェー南部、スウェーデンから、南は西アフリカセネガルまでに及んでいる。地中海では、西半分やアドリア海では一般的であるが、東半分や黒海では一般的ではない[5]。群れで移動し、多くは湾岸にいるが、外海に100kmも旅することもある。日中には、多くは水深22-55mにいるが、100mまで潜ることもある。夜間には、水深10-35mにまで浮上する[1]

生態

日中、リグリア海の浅い海域で群れる若い個体

地中海では、秋には沖合に移動し、温度や塩分濃度が変化する湾内の水よりも、より冷たく塩分濃度が一定な外海の深い水を好む。冬には産卵が始まり、早春には幼体や若い成体、一部の成熟した成体が沖に向かって移動し、その他の成体は、年内のより遅い時期に湾内に移動する。長い繁殖期間に複数回産卵が行われ、総妊孕力は、5万から6万になる。1歳の時点では大部分がオスで、体長は13-14cmになる。約8年で完全に成長し、21cm程度に達する[6]

動物性プランクトン植物性プランクトンの両方を食べる。動物性プランクトンの多くはカイアシ類やその幼体であり、日周鉛直移動を行って、夜間には海面近くに移動し、成熟した成体はこの時に餌を食べる。若い個体は、日中にも餌を食べる[6]モトカタクチイワシとともに、プランクトンの消費者や、ヨーロッパヘイクヨーロッパアナゴ等の底生捕食者の餌として、地中海の生態系において重要な位置を占める。この役割は、水深が浅くて食物連鎖が短く、エネルギーが海底に留まりやすいアドリア海では、より顕著である。そのため、イワシの乱獲は生態系の劇的な変化を引き起こしうる[6]

利用

シラクサのこの露店では、中央右のニシイワシが最も安い値段で売られている。

分布域の多くでは、重要な漁獲資源となっている。主にきんちゃく網ランパラ網で獲られるが、底引網が使われることもある。合計で、年間100万トン程度が漁獲され、モロッコポルトガルスペインは漁獲量が多い。国際連合食糧農業機関(FAO)は、モロッコでは乱獲されていると考えている[5]

成熟したものはピルチャード、若いものはサーディンとして販売されるが[2]、これらの使い分けは厳密ではなく、地域にも依る。例えばイギリスのSea fish Industry Authorityでは、若いピルチャードをサーディンと分類している[7]。ある基準では、体長15cmに満たないものをサーディン、それ以上のものをピルチャードとするものもある[8]。FAO/WHOコーデックス委員会の規格では、サーディンの缶詰には、21種類が用いられうるとしている[3]

生、冷凍、缶詰、塩漬け、燻製、乾燥等の携帯で販売される。生のものは価格が低く、釣り用の餌や肥料にされたり、魚粉に加工されることもある[1]

出典

  1. Tous, P.; Sidibe, A.; Mbye, E.; de Morais, L.; Camara, Y.H.; Adeofe, T.A.; Munroe, T.; Camara, K. et al. (2015). Sardina pilchardus. IUCN Red List of Threatened Species 2015. https://www.iucnredlist.org/details/198580/0 2018年8月19日閲覧。.
  2. European pilchard (Sardina pilchardus)”. Fishes of the NE Atlantic and the Mediterranean. Marine Species Identification Portal. 2018年8月20日閲覧。
  3. Codex standard for canned sardines and sardine-type products codex stan 94 –1981 REV. 1–1995”. Codex Alimentarius. FAO/WHO Codex Alimentarius Commission. pp. 1–7. 2007年3月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月18日閲覧。
  4. Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2006). "Sardina pilchardus" in FishBase. April 2006 version.
  5. Sardina pilchardus (Walbaum, 1792)”. Species Fact Sheet. FAO. 2018年8月19日閲覧。
  6. Gibson, R.N.; Atkinson, R.J.A.; Gordon, J.D.M. (2016). Oceanography and Marine Biology: An Annual Review. CRC Press. pp. 209–226. ISBN 978-1-4200-9422-0. https://books.google.com/books?id=PDlCjy30WKkC&pg=PA209
  7. FAQs”. Seafish. 2011年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月22日閲覧。
  8. Stummer, Robin (2003年8月17日). “Who are you calling pilchard? It's 'Cornish sardine' to you...”. The Independent. オリジナルの2010年9月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100912070106/http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/who-are-you-calling-pilchard-its-cornish-sardine-to-you-536136.html 2009年11月1日閲覧。
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