テリー・キャス

キャスはギタリスト兼ヴォーカリストでもあり、バンジョー、アコーディオン、ベース、ドラムを演奏できるマルチプレーヤーであった。

親友でサックスプレーヤー、フルート奏者のウォルター・パラゼイダー、ドラマーのダニー・セラフィンと共に、「ザ・ミッシング・リンク」と呼ばれるバンドを立ち上げるべく活動を開始。パラゼイダーのアパートで練習を重ねる間に、トロンボーン奏者のジェームズ・パンコウ、トランペッターのリー・ロックネイン、ヴォーカリスト兼キーボディストのロバート・ラムも仲間に加え、「ザ・ビッグ・シング（ザ・ビッグ・サウンドと呼ばれることもある）」というバンドを結成するに至る。さらにヴォーカリスト兼ベーシスト兼アコーディオン奏者のピーター・セテラが加入したことにより、彼らは活動拠点をロサンゼルスに移し、コロムビアレコードと契約した。バンド名は「シカゴ・トランジット・オーソリティ」に変更されたが、1970年、「シカゴ」に短縮された。

キャスは1969年のデビューアルバムリリース時から、ギタリスト、ヴォーカリスト、ソングライターとして、バンドの中心人物として活躍した。

ギタリストとしての実力は十分だったものの、外見が肥満体ゆえギターヒーロー的支持は今ひとつだった。

1978年1月23日の午後5時頃、ローディーの家でのパーティーの後、キャスはふざけて弾丸未装填の38口径リボルバーを頭に押しつけ、数回トリガーを引いてロシアン・ルーレットごっこをした。友人はキャスに気をつけろと何度か注意したが、そのあとキャスは自動拳銃を手に取り、「心配ない、弾は入ってないから」と言った。安心させるため、キャスは空の弾倉を友人に見せた。ところが、一発の実弾が入ったままだった（自動拳銃は構造上、弾倉を抜いても薬室に1発実弾が残ることがある）事に気付かず、キャスは銃口を頭に当て、トリガーを引いた。彼は自らのこめかみを撃ち抜いて即死した。32回目の誕生日を迎える一週間前の出来事だった。