ツルアリドオシ

ツルアリドオシ(蔓蟻通し、学名Mitchella undulata Sieb. et Zucc.[1] )は、アカネ科ツルアリドオシ属の地面を這う常緑蔓性[2]多年草[3][4]和名は、葉や花などがアリドオシに似ていることに由来する。

ツルアリドオシ
福島県会津地方 2015年9月
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: リンドウ目 Gentianales
: アカネ科 Rubiaceae
: ツルアリドオシ属 Mitchella
: ツルアリドオシ M. undulata
学名
Mitchella undulata Sieb. et Zucc.[1]
和名
ツルアリドオシ

特徴

常緑性の多年草[3]。茎はその断面が円形で、無毛、長さは10-40 cmになるが、完全に這うか垂れ、地表を離れて上向きに伸びることはまずない。茎の節からは根を出す[5]。葉は対生[4]、ごく小さな托葉がある。葉は卵形で長さ0.8-1.5 cm、幅は0.4-1.2 cm、長さ2-5 mmの葉柄がある。葉身は深緑でつやがあり、厚くて毛が無く、卵形で先端は短く尖り、基部は丸い。また、辺縁はやや波打っている。

異型花柱性の被子植物[6]。花期は6-7月で[4]、枝先に長さ5 mmほどの花茎を出し、その先に花をつける。花は必ず2個着き、それぞれの花の基部にある子房は互いに合着している。花冠は白色で漏斗状になって長さ10 mm、先端は4裂し、裂片は大きく開いて径8 mm。裂片の内側には毛がある。雄蘂は4個あり、花冠内側から出て、開いた部分の葯が覗く。果実は熟すと赤くなり、丸くて径8 mm。果実は合着した二つの子房がまとまった形で膨らんだもので、左右2個の花のの痕が表面に残る[4]

和名は葉の形や付き方、華やか実など、様々な特徴がアリドオシに似て、蔓性であることによる[2]種小名の「undulata」は、「波状の」を意味する[4]

分布

日本朝鮮南部に分布する[3][4]

日本では北海道から九州にかけて分布し[3]山地から亜高山帯にかけてやや湿った林縁などに生育する[4]

生態など

山林地において林床を覆い、時に岩から垂れ下がる。薄暗い木陰に生えるもので、この種を見かけると、その辺りが日当たりが悪いと判断できる[7]。 地上、特にしばしばコケの上を這う。また、株によって花柱が長く突き出るものと、花柱が短くて雄蘂が長く出るものとの2形がある[5]

日本では山野草として苗が市販されている。

分類

ツルアリドオシ属にはツルアリドオシの他にもう1種あり、Rubiaceae repens L.北アメリカに分布する。この種は本種と極めて近いもので、牧野富太郎は同一種内の別亜種としていた[2]

アリドオシ属は、見かけが似ているだけで直接的な類縁は近くない。コケサンゴ属 Nertera は近縁で、コケサンゴ N. granadensis は鉢植えなどで鑑賞される[7]

脚注

  1. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). ツルアリドオシ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2016年10月1日閲覧。
  2. 牧野 (1961)、586頁
  3. 山崎 (1981)、91頁
  4. 豊国 (1988)、160頁
  5. 北村他 (1990)、114頁
  6. 石川 (2011)、1頁
  7. 三宅 (1997)、26頁

参考文献

  • 石川有里子、小倉朋子、森田竜義「新潟市「じゅんさい池公園」におけるシロバナサクラタデの異型花柱性」(PDF)『福井総合植物園紀要』第7巻、福井総合植物園、2011年3月、NAID 120005240421
  • 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1。
  • 北村四郎村田源・堀勝、『原色日本植物図鑑 草本編(I)』改訂版、(1990)、保育社
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038。
  • 牧野富太郎、『牧野 新日本植物圖鑑』、(1961)、図鑑の北隆館
  • 三宅慎也、「アリドオシ(ツルアリドオシ)」:『朝日百科 植物の世界 2』、(1997)、朝日新聞社

外部リンク

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