ツルアジサイ
ツルアジサイ(蔓紫陽花[5]、学名: Hydrangea petiolaris)は、アジサイ科[注 1]アジサイ属の落葉つる性木本。和名の由来は、つる性のアジサイの意味である[6]。別名で、ゴトウヅル[1][7][6]、ツルデマリ[1][6]、ウリヅル[6]、ウリツタ[6]ともいう。
ツルアジサイ | |||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
福島県会津地方 2008年6月 | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Hydrangea petiolaris Siebold et Zucc. (1839)[1] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ツルアジサイ(蔓紫陽花) | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Climbing Hydrangea |
特徴
落葉つる性の木本で[7]、幹や枝から気根を出して高木や岩崖に付着し、絡みながら這い登り、高さ5 - 20メートル (m) くらいになる[7]。樹皮は淡褐色から赤褐色で、幹は縦に裂けて剥がれるが、枝は明褐色で皮目は少ない[5]。枝は短枝もよく出る[5]。気根は2年枝から出始める[5]。
葉には長い葉柄がついて枝に対生し、葉身は10センチメートル (cm) ほどある卵円形から広卵形で、先端は尖り、葉縁は鋭い鋸歯がある[8][6]。
花期は初夏(6 - 7月ごろ)で[7]。枝の先に白い小花が多数集まった散房状集散花序をつくる[8]。花姿はガクアジサイに似ており[6]、小さなややクリーム色をした5弁の両性花が集まる花序のまわりに、白色で3 - 4枚の花弁状の大きな萼片を持つ装飾花が縁どる[7][8]。冬になっても装飾花の萼片が、枯れ残っていることもある[5]。果実は9 - 10月の褐色に熟し、種子には翼がある[7]。冬芽は枝先の頂芽は長卵形で大きく、枝に対生する側芽は小さい[5]。芽鱗は4枚あるが見えるのは外側の2枚だけで、その表面は滑らかである[5]。
- スギに絡みつくツルアジサイ
- 高木を這い登る幹と葉
利用
枝のあちこちから萌え出た若芽が食用になり、キュウリに似た爽やかな香りがある[6]。採取時期は暖地が3 - 4月、寒冷地で5 - 6月が適期とされる[6]。灰汁がなく、茹ですぎるとキュウリのような消えてしまうため、熱湯にくぐらす程度にして水にさらし、おひたし、サラダ、和え物、酢の物、煮びたし、炒め物などにする[8][6]。また、生のまま天ぷらや汁の実にする[8][6]。
よく似た植物
姿がよく似ているイワガラミ(アジサイ科)は、ツルアジサイとともに若葉が山菜として食べられる[7][6]。双方とも蔓になり、アジサイ様の花序が出る点で共通するが、イワガラミは装飾花に発達する萼片が1枚だけである点で見分けられる[5]。
同じようなところに、触れるとかぶれてしまうツタウルシ(ウルシ科)が生えている[9]。間違えやすい有毒植物として知られるが、ツルアジサイやイワガラミは葉が2枚ずつ向き合ってつく対生であるのに対して、ツタウルシでは3枚ずつ出て、葉縁には鋸歯がない全縁である点で見分けられる[9]。
近縁種
- アジサイ属の一覧
脚注
出典
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea petiolaris Siebold et Zucc. ツルアジサイ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月26日閲覧。
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea petiolaris Siebold et Zucc. var. cordifolia (Siebold et Zucc.) Franch. et Sav. ツルアジサイ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月26日閲覧。
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hydrangea anomala D.Don subsp. petiolaris (Siebold et Zucc.) E.M.McClint. ツルアジサイ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月26日閲覧。
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Calyptranthe petiolaris (Siebold et Zucc.) H.Ohba et S.Akiyama ツルアジサイ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月26日閲覧。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 89.
- 金田初代 2010, p. 100.
- 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 205.
- 高橋秀男監修 2003, p. 107.
- 金田初代 2010, p. 101.
参考文献
- 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、100 - 101頁。ISBN 978-4-569-79145-6。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、89頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、107頁。ISBN 4-05-401881-5。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、205頁。ISBN 4-522-21557-6。