ダッジ・キャラバン

キャラバンCaravan )は、1983年からクライスラーの一部門であるダッジ2020年まで製造・販売していた自動車。アメリカにおけるミニバンのパイオニア的存在として知られる。また、派生車種として全長を延長したグランドキャラバンGrand Caravan )が存在していたが、現行モデルよりサイズが一本化されたことによりこのサブネームに統一された。

プリムスでは「ボイジャー」としてラインナップされていたほか、欧州やアジア市場ではクライスラーブランドで発売され、日本では3代目から「クライスラー・ボイジャー/グランドボイジャー」として導入されたが2010年を最後に、日本国内での販売を終了した。

概要

キャラバンの原点となるモデルは、リー・アイアコッカによって提案された。

アイアコッカはフォード・モーターに在籍していた1974年頃からミニバンの構想を持っていたが、当時の会長であったヘンリー・フォード2世に反対され頓挫していたため、クライスラーへ移籍した際に同じくヘンリー・フォード2世との対立の末クライスラーに移籍したハロルド・スパーリックとともに、この構想を「クライスラー・Sプラットフォーム」を使用したFFベースのモデル「コード名T115」として開発に着手した。 完成したキャラバンはそのコンセプトがヒットし、経営難に陥っていたクライスラーを窮地から救う契機となった。

キャラバンが発売される以前より、欧州ではルノー・エスパスが展開されていたが、北米でのミニバンモデルはキャラバンが実質初となり、また販売面においても競合他社を大きく凌ぎ、北米においてはミニバンの代名詞とも言えるほどの存在となった。

1987年からはロングホイールベースのグランドキャラバンが追加されており、2008年からはラインナップ整理によりこちらのモデルへと一本化された。

初代(1983年–1990年)

ダッジ・キャラバン(初代)
初代(前期型)
概要
別名 プリムス・ボイジャー
クライスラー・タウン&カントリー
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
販売期間 1983年–1990年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ ミニバン
駆動方式 FF
プラットフォーム クライスラー・Sプラットフォーム
パワートレイン
エンジン 2.2L K型 直4 SOHC
2.6L G54B型 直4 SOHC
3L 6G72型 V6 SOHC
最高出力 84hp(K型)/141hp(6G72型)
変速機 5MT/4AT/3AT
車両寸法
ホイールベース キャラバン:2,847mm
グランドキャラバン:3,025mm
全長 キャラバン:4,468mm
グランドキャラバン:4,874mm
全幅 キャラバン:1,765mm
グランドキャラバン:1,829mm
全高 キャラバン:1,636mm
グランドキャラバン:1,651mm

初代は1983年1984年モデルとしてデビュー。クライスラーのFF車プロジェクトである一連の「Kカー」に採用されていた「クライスラー・Sプラットフォーム」およびそのコンポーネンツを流用して製作された。 グレード構成はベースモデル、普及モデルのSE、上級モデルのLEが設定されていた。 FFレイアウトであることを生かした低床設計となっており、これにより従来販売されていたフルサイズのバンよりも小型でありながら、それに劣らぬ室内空間を確保したこと、スライドドアによる昇降性のよさ、さらにはシートを組み替えることでレイアウトが変更できる自由さを備えていたことにより、従来フルサイズバンの取り回し難さにより敬遠していたユーザに対して訴求力となり、販売が成功した。

デビュー当初より1988年までは同ブランドの代表車でもある「ダッジバン」にあやかったミニ・ラムバンと呼ばれるグレードも存在した。また貨物モデルや三菱製エンジン「6G72」を搭載したモデルの設定もあった。

なお、1987年には全長を延長し積載量を向上させたグランドキャラバンが追加された。

1990年クライスラー・タウン&カントリーの5代目モデルとしてクライスラー版が登場した。

マイナーチェンジを続けながら1990年まで販売を継続し、2代目へと移行した。

2代目(1990年–1995年)

ダッジ・キャラバン(2代目)
2代目
概要
別名 プリムス・ボイジャー
クライスラー・タウン&カントリー
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
販売期間 1990年–1995年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ ミニバン
駆動方式 FF/4WD
プラットフォーム クライスラー・ASプラットフォーム
パワートレイン
エンジン 2.2L K型 直4 SOHC
3L 6G72型 V6 SOHC
3.8L EGH型 V6OHV
最高出力 100hp(K型)/150hp(6G72型)/162hp(EGH型)
変速機 5MT/4AT/3AT
車両寸法
ホイールベース キャラバン:2,847mm
グランドキャラバン:3,025mm
全長 キャラバン:4,468mm
グランドキャラバン:4,897mm
全幅 キャラバン:1,828mm
グランドキャラバン:1,834mm
全高 キャラバン:1,631mm
グランドキャラバン:1,694mm

2代目は1990年にデビューした。シャーシはKプラットフォームベースの「ASプラットフォーム」を採用している。先代モデルは前輪駆動のみであったが、本モデルからは四輪駆動もラインナップされた。 動力性能などは先代からほとんど変わっていないが、先代のコンセプトを昇華することが主眼に置かれており、バケットシート、ABS、サイド/デュアルエアバッグが設定された。内装もファブリックシートや木目調内装の設定など、豪華指向のものがラインナップされ、快適装備が充実していた。

3代目(1996年–2000年)

ダッジ・キャラバン(3代目)
3代目
概要
別名 プリムス・ボイジャー
クライスラー・タウン&カントリー
クライスラー・ボイジャー/グランドボイジャー
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
販売期間 1996年–2000年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ ミニバン
駆動方式 FF/4WD
プラットフォーム クライスラー・NSプラットフォーム
パワートレイン
エンジン 2.4L EDZ型 直4 SOHC
3L 6G72型 V6 SOHC
3.8L EGH型 V6OHV
変速機 4AT/3AT
車両寸法
ホイールベース 2,878mm
グランドキャラバン:3,030mm
全長 キャラバン:4,732mm
グランドキャラバン:5,072mm
全幅 1,951mm
全高 1,745mm

3代目は1996年にデビューした。本モデルからプラットフォームが一新され、需要の低かったMT車が廃止された。

エンジンは前モデルから大きな変更はなかったものの、三菱製ユニットが一部の州で排出ガス基準に適合しなくなったため、本モデルを最後に搭載が見送られた。

内装はより実用性を高めたものが採用され、特に容易なシートレイアウトを可能とした「イージーローラーシート」の設定は画期的であった。

日本では1997年に導入され、ショートモデルは「クライスラー・ボイジャー」、ロングモデルは「クライスラー・グランドボイジャー」として販売された。これは「キャラバン」の名称が日産自動車車種で用いられており、使用が不可能だった事による。ラインナップは3.8L V6+4ATの組み合わせのみであった。

4代目(2001年–2007年)

ダッジ・キャラバン(4代目)
4代目
概要
別名 プリムス・ボイジャー/グランドボイジャー
クライスラー・タウン&カントリー
クライスラー・ボイジャー/グランドボイジャー
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
販売期間 2001年–2007年
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ ミニバン
駆動方式 FF/4WD
プラットフォーム クライスラー・RSプラットフォーム
パワートレイン
エンジン 2.4L EDZ型 直4 SOHC
3.8L EGH型 V6OHV
変速機 4AT/3AT
車両寸法
ホイールベース キャラバン:2,878mm
グランドキャラバン:3,030mm
全長 キャラバン:4,808mm
グランドキャラバン:5,095mm
全幅 1,996mm
全高 1,750mm

4代目は2000年に発表された。新車発表の際、ユニークな試みとして、ナビスコの新製品「mini OREO」の発表と合同で行われた。コンポーネントは先代から多くが流用されているが、デザインは一新され全体的に丸みを帯びたものとなった。また、プリムス・ボイジャーは2001年に消滅し、2002年のプリムスブランド消滅後は2003年まで、暫定的にSWBモデルのみクライスラーブランドとして販売されていた。

本モデルの特徴としてはパワースライドドア、パワーハッチバック、キーレスエントリー、DVDシステムが搭載されていることがあげられる。また、シートには先代で採用された「イージーローラーシート」の利用感を見直した「ストーンゴーシート」が採用され、2列目と3列目を床下に収納することで、さらに多彩なレイアウトアレンジを可能としている。本モデル以降、日本仕様のデザインはクライスラー・タウンアンドカントリー仕様となっている。

なお、ダッジブランドの世界戦略化により、本モデルから中国での販売が開始された。

5代目(2008年 –2020年 )

ダッジ・キャラバン(5代目)
5代目
クライスラー・グランドボイジャー
概要
別名 クライスラー・タウン&カントリー
クライスラー・グランドボイジャー
ランチア・ボイジャー
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
販売期間 2008年–2020年
デザイナー ラルフ・ジル
ボディ
乗車定員 7名
ボディタイプ ミニバン
駆動方式 FF
プラットフォーム クライスラー・RTプラットフォーム
パワートレイン
エンジン 3.6L V6 DOHC
3.8L V6 OHV
4.0L V6 SOHC
変速機 6AT/4AT
車両寸法
ホイールベース 3,078mm
全長 5,144mm
全幅 1,953mm
全高 1,750mm
系譜
後継 クライスラー・パシフィカ

5代目は2008年に販売開始。デザイナーは300をデザインしたラルフ・ジルで、他のダッジ車と共通したグリルデザインなどに特徴が出ている。

従来はショートモデルを「キャラバン」、ロングモデルを「グランドキャラバン」と設定していたが、本モデルからはロングモデルに一本化され「グランドキャラバン」の名称に統一し、ショートモデルはクロスオーバーの「ダッジ・ジャーニー」にその役目を譲っている。

なお、同じクライスラー系列のブランド「RAM」からは暗窓の商用車仕様が「RAM C/V」として発売されている。

長らくキャラバンは北米においてミニバンの代名詞であったが、近年はトヨタ・シエナホンダ・オデッセイなどにシェアを奪われつつあり、本車の装備にはそれらの車種を意識したものが見て取れる。 四輪駆動はラインナップされていないほか、本モデルより4.0L V6エンジンおよびインパネタイプの6AT[1]が設定された。両側パワースライドドアやパワーテールゲートを引き続いて採用しているほか、天井には間接照明、収納部分が追加され、さらには「スイーベルンゴーシート」と呼ばれるシートレイアウト+マルチAVシステム、パワーリフトスイッチなどが設定されている。

また右ハンドル仕様では、レイアウトの関係でインパネシフトではなくフロアシフトを採用している。先代では日本のみタウンアンドカントリーベースであったが、今モデルでは北米以外の全ての輸出仕様においてタウンアンドカントリーベースに統一された。

しかし販売直後に起きたガソリン高騰の煽りを受け、本車の販売は燃費性能で劣るロングモデルに統一したことが災いして、従来モデルに比べると苦戦を強いられている。

ヨーロッパでは、クライスラーとランチアのディーラー網が統合され、大陸側ではランチアブランドに一本化されたことに伴い、ランチアにリバッジされたボイジャーが2011年3月のジュネーヴモーターショーにて発表された。従来のフェドラの後継車種としての役割も担うこととなる。

2011年4月、クライスラージャパン公式サイトからグランドボイジャーに関する記述が削除され、日本での販売を終了した。

2012年からはクライスラーコリア(CXCモータース)を通じて韓国市場での発売を開始した。

関連項目

脚注

  1. メーターフード脇に設置される
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