Z世代
(ゼットせだい)、ジェネレーションZ(英: Generation Z)とは、アメリカ合衆国をはじめ世界各国において概ね1990年代中盤(稀に90年代序盤も含まれる)から2000年代終盤、または2010年代序盤までに生まれた世代のことである[2][3]。生まれた時点でインターネットが利用可能[注 1]であった人類史上最初の世代である。いわゆるデジタルネイティブでもある。
アメリカ合衆国の世代 *=諸説あり, ?=世代の期間が定まっていない, ^=シュトラウス=ハウ世代理論 | |
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○○世代 | 期間 |
^清教徒世代 | 1588 - 1617 |
清教徒の目覚め | 1621 - 1649 |
^en:Cavalier Generation ^en:Glorious Generation ^en:Enlightenment Generation ^en:Awakening Generation |
1618 - 1648 1648 - 1673 1674 - 1700 1701 - 1723 |
第一次大覚醒 | 1727 - 1746 |
^en:Liberty Generation ^en:Republican Generation ^en:Compromise Generation |
1724 - 1741 1742 - 1766 1767 - 1791 |
第二次大覚醒 | 1790 - 1844 |
en:Transcendentalist Generation ^en:Transcendental Generation ^en:Gilded Generation ^en:Progressive Generation |
1789 - 1819 1792 - 1821 1822 - 1842 1843 - 1859 |
第三次大覚醒 | 1886 - 1908 |
^Missionary Generation(英語) 失われた世代 戦間期世代 最も偉大な世代の人々 ^G.I.世代 |
1860 - 1882 *1883 - 1900 1901 - 1913 *1901 - 1927 1901 - 1927 |
ジャズ・エイジ | 1918 - 1929 |
ビート・ジェネレーション 沈黙の世代 ベビーブーマー ジョーンズ世代 |
1914 - 1929 *1928 - 1945 *1946 - 1964 1954 - 1965 |
意識革命 | 1964 - 1984 |
X世代 ^13世代 MTV世代 ブーメラン世代 |
*1965 - 1980 1961 - 1981 1974 - 1985 1977 - 1986 |
文化戦争 | 1980s - present |
デジタルネイティブ ミレニアルズ(Y世代) Z世代 ^ニュー・サイレント・ジェネレーション α世代 |
*1976 - present *1981 - 1996 *1997 - 2012 ? *1990 - 2009 ? *2013 - 2028 ? |
名称の由来
名称は1950年代、ハンガリーの写真家、ロバート・キャパにより出版された、第二次世界大戦後生まれの青年を撮影した写真集『Generation X』より出拠する。 現代の社会的文脈においては1991年、ダグラス・クープランドにより上梓された著書『ジェネレーションX -加速された文化のための物語たち』が国際的にベストセラーとなったことより称されている。クープランドによる著書においては、当時青年期であった、およそ西暦1965年~1979年出生者を「ジェネーションX」と標榜した。英語の「X」には、SFテレビドラマの「X-ファイル」や、発見された当時に得体の知れぬ物体であったことから「X」と称された名残を持つ「X線」など、ギリシャ語の「Xei」から転じられた「未知」を表しており、「前世代のベビーブーマーよりもつかみどころのない、未知なる世代」であるとして、欧米にて人口に膾炙した[4]。日本におけるジェネレーションXは、概ねバブル世代~ロスジェネ世代にあたる[5]。
ジェネレーションXの次世代となる西暦1980年~1994年頃出生したポストX世代を、アルファベットでXに次ぐ世代として「ジェネレーションY」(ミレニアル[注 2]世代とも呼ばれる。日本ではロスジェネ世代末期~プレッシャー世代~ゆとり世代にあたる)となぞらえた[4]。
のちに、ジェネレーションYのポスト世代(概ね1995年~2010年生まれ、一部メディア等では1992年から1994年生まれの者もZ世代に含める事もある)を、Yの次にあたる「ジェネレーションZ」と称される運びとなる[4]。日本においても、若者研究の第一人者[6]として知られる原田曜平によって、ポストゆとり世代を「Z世代」と紹介される[7]。徐々にマスメディア、マーケティング業界を中心に呼称が浸透し、2021年には、ユーキャン新語・流行語大賞トップ10に選出された。
歴史
1990年代中間から2010年代前半に生まれた世代ではあるが、カナダ統計局の場合には1993年生まれ以降を[8]、アメリカ心理学会の場合には1997年生まれ以降を指すなど[9]、定義は厳密に決められているわけではない(何年生まれまでを指すかについても、2010年頃とされる場合や2010年代序盤から中盤とされる場合もあり流動的である)[10]。
日本においては概ね阪神・淡路大震災後の1995年(平成7年)4月2日から東日本大震災直後の2011年(平成23年)4月1日までに生まれた世代に相当する。主に2010年代から2020年代に掛けて社会に進出する世代となる。大半がX世代(日本ではバブル世代・団塊ジュニアに相当)の子供世代に当たる。
生まれた時点でインターネットが利用可能であったという意味でのデジタルネイティブ世代としては最初の世代となる[11][12]。デジタル機器やインターネットが生まれた時から当たり前のように存在し[11][12]、ウェブを日常風景の一部として感じ取り、利用している世代である。
また、パソコンよりもスマートフォンを日常的に使いこなし、生活の一部となっている「スマホ世代 (iGen)」でもある[13]。さらに、「baby boomer」を揶揄する「Boomer」になぞらえ「Zoomers(ズーマーズ)」とも呼ばれる[14]。成長期にWeb 2.0を当たり前のように享受し、情報発信力に長けているため、当該世代からは数多くのインフルエンサーが登場している。
この他、Z世代と同時期に生まれた若者は、(シーせだい)、ジェネレーションC(英: Generation C)[15][16][17][注 3]、あるいはニュー・サイレント・ジェネレーション(英: the new silent generation)[注 4]と呼ばれることもある。
特徴
ミレニアル世代(Y世代)よりもさらに周囲のIT環境が進展しており、幼少期から“デジタルデバイス(機器)やインターネット、SNS含むソーシャルメディアの存在を前提とした生活”をしているデジタルネイティブ(ネットネイティブ、あるいはソーシャルネイティブ)世代である 。生まれた時からインターネットに接続するための基本的な端末であるパソコンや携帯電話が既に存在しており、インターネットを利用し始めた頃にはADSLやCATVなどブロードバンドによる常時接続環境、SNS含むWeb 2.0、さらにスマートフォンが普及し、個人の情報発信が身近となっていた[11][12]。
2020年に始まった新型コロナウイルス (COVID-19) のパンデミックの影響で、義務教育と高等教育の両方で、全社会的に実施された遠隔教育(オンライン授業)を受ける最初の世代となった[19]。
2020年時点で世界人口の約3分の1を占めており[20]、割合はミレニアル世代を上回る。少子高齢化が世界で最も進んだ日本においては、Z世代を2020年4月1日時点での10歳〜24歳(概ね1995年(平成7年)4月2日〜2011年(平成23年)4月1日生まれの世代に相当)と定義した場合、それに当たる人口は1752万人であり、総人口の7分の1弱と少なく、約13.9%となる[21]。
日本では Z世代の約5割が「子どもがほしくない」と回答しており少子化傾向が続くとみられる[22]。
Z世代の多くは、幼少期からリーマンショックやコロナ禍による不況を経験している。そのため、企業に対する期待感が低い傾向にある。企業への期待感がないため、ひとつの企業に対する執着がない傾向がある。そのため他世代と比べ、短期間で離職する傾向があったり、副業への抵抗感が薄いといえる。[23]
ジェネレーション・レフト
欧米ではミレニアル世代と合わせてジェネレーション・レフト(左派世代)と呼ばれる経済格差や気候変動、ジェンダー問題、ポリティカル・コレクトネス、ブラック・ライヴズ・マター、ヴィーガンなど左派的活動を行う者が目立つ[24]。旧ソ連型の体制を知らないミレニアムやZの若い世代は社会主義に負のイメージがなく、資本主義体制に失望するほど左派に傾倒。世論調査会社ユーガブの19年の調査によると「社会主義の候補者に投票するか」との問いにZ世代の64%、ミレニアム世代の70%が「投票の可能性が高い」と答えた。16年の大統領選の民主党候補者選びでは民主社会主義者バーニー・サンダース旋風に一役買った。2022年現在の日本では同世代(ミレニアル世代・Z世代)が左派的活動をしていることは少ないが、左派系知識人やマスメディアを中心に「Z世代」という言葉を日本にも広めて欧米のジェネレーションレフトを賞賛し、同じように日本の同世代が「目覚める」ことを期待して日本でのジェネレーションレフトを増やそうとする意図が存在する[25][26][27][28]。
「Z世代」という表現に対する否定的意見
デジタルネイティブでジェネレーションレフトであるといったような世代論が、当事者を大人が作ったあるべきZ世代の枠に押し込める危惧もある[29][30]。
お笑いタレントのカズレーザーは「Z世代」という言葉は年配者が作った言葉であり、Z世代という表現そのものが今時の価値観ではないと提唱している[30]。自分自身をZ世代と称する2000年代生まれの人物より相談があり「老害が多すぎて嫌になる」という相談に対し、「Z世代とかY世代って上の(世代の)人(たち)が勝手に作った枠組みなんですよ……今の価値観にアップデートしたいんだったらこういう言葉は使わないほうがいいですよ、古臭く見られます……絶対“Z世代”なんてダサい言葉使わないでください。昭和だと思われます」と発言し、多くの称賛の声が挙がった[30]。
- 世界の人口ピラミッド(2018年)
- 日本の人口ピラミッド(2019年)
Z世代に関するできごと
脚注
注釈
- 日本に関する限り、民間人がインターネットを使用するようになったのは1994年6月からである。官公庁はその1年前から使用していた。
- ミレニアル=千年紀
- computer コンピューター、 connected(接続)、community(共同体)などの頭文字から取られたデジタルネイティブ世代にも通じる概念で、Z世代などのように生まれた年で区切る厳密な定義はないが、一般的には1980年代に生まれたミレニアル世代(Y世代)も含まれるケースが多い[15]。
- ウィリアム・シュトラウスとニール・ハウの共著『世代』 (1991) において、1990年代以降に生まれる世代の名称として提案された。同著ではアメリカにおける世代の周期性から、この頃に「サイレント世代」が復活すると予測している。なお、かつてのサイレント・ジェネレーション(英: Silent Generation)は、ベビーブーマーやX世代の親世代に当たる1928年〜1945年頃に生まれた世代で、後の騒々しいブーマー世代との対比により「サイレント・ジェネレーション」(沈黙の世代)と呼ばれた。
出典
- Defining generations: Where Millennials end and Generation Z begins - Pew Research Center (January 17, 2019)
- Michael Dimock (2019年1月17日). “Defining generations: Where Millennials end and Generation Z begins”. ピュー研究所. 2023年5月2日閲覧。
- “第1話/SNSで集う才能、デザインする「YOSE」”. 産経ニュース (2022年1月4日). 2023年5月2日閲覧。
- “Z世代という言葉を聞いたことがあるでしょうか”. 廣瀨涼(株式会社ニッセイ基礎研究所研究部研究員) (2021年7月1日). 2023年5月11日閲覧。
- “ミレニアル世代とは 1981~96年生まれ、多様性を重視”. 日本経済新聞社 (2019年7月6日). 2023年5月11日閲覧。
- “若者研究の第一人者・原田曜平さんに聞く、Z世代を読み解く2021年最新キーワード(前編)”. 電通プロモーションプラス (2021年4月22日). 2023年5月11日閲覧。
- “Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?”. 光文社. 2023年4月28日閲覧。
- Shelley White (2015年10月22日). “The Generation Z effect” (英語). グローブ・アンド・メール
- “Stress in America: Generation Z” (英語) (PDF). American Psychological Association. (2018年10月) 2023年5月2日閲覧。
- Neil Howe and Bill Strauss (July–August 2007). “The Next 20 Years: How Customer and Workforce Attitudes Will Evolve” (英語). Harvard University 2015年12月10日閲覧。
- “ミレニアル世代 vs Z世代:押さえておくべき4つの違いと特徴”. Criteo. (2018年8月14日)
- “スマホは銃より強し 背後に迫るZ世代 ミレニアルの憂鬱(5)”. 日本経済新聞. (2019年5月6日)
- “米国に「iGen(スマホ世代)」が登場 1995~2012年生まれ、精神的不健康が特徴”. J-CASTニュース. (2017年9月22日)
- 「北米ティーンの英語スラング&トレンドワード64選 S~Z編【2023年最新版】」『English Journal Online』ALC PRESS INC.、2023年3月15日。
- “「C世代」と拓く新世界”. 日本経済新聞. (2012年1月8日)
- “YouTubeの成長を牽引する、“ジェネレーションC”の行動スタイル”. AdverTimes〈アドタイ〉宣伝会議編集部. (2013年4月5日)
- “ニールセンのイベントで、 ソーシャルメディア時代に最も影響力の高い『C世代 (ジェネレーション C)』を定義”. All Digital Music. (2010年10月30日)
- “「コロナ以降」社会、経済はこうなる! 「白い戦争」WHITE WARSとTrans-COVID/Post-COVID”. JBpress(日本ビジネスプレス) (2020年4月9日). 2020年4月12日閲覧。
- Abram Brown (2020年9月27日). “世界人口の3分の1、「Z世代」について知っておくべき事柄”. Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン). 2023年5月2日閲覧。
- “人口推計 各月1日現在人口 月次 2020年6月”. 総務省統計局 (2020年6月22日). 2020年11月10日閲覧。
- “Z世代の5割「子どもをほしくない」 お金以外の理由の1位は?”. ITmedia ビジネスオンライン. 2023年5月6日閲覧。
- “Z世代とは?共通する特徴や他世代との違い、仕事に対する考え方について解説”. izul.co.jp. 2023年5月19日閲覧。
- Azumi Hasegawa (2022年2月5日). “ジェネレーション・レフトはなぜ生まれたのか。【コトバから考える社会とこれから】”. VOGUE JAPAN
- “「ジェネレーション・レフト」 アメリカで、日本で、若い私たちが政治を変える”. 東京新聞. (2022年2月11日)
- “斎藤幸平氏インタビュー・後編 海外で広がるジェネレーション・レフト―日本での可能性は”. 全国保険医新聞. (2021年12月5日)
- “時に「対立」辞さず行動 ジェネレーション・レフト、強まる胎動”. 毎日新聞. (2022年7月2日)
- “欧米と逆行? なぜ日本の若者は選挙に行かず「左傾化」もしないのか”. 集英社. (2022年7月7日) 日
- 荒川和久 (2022年5月28日). “世代論を唱えるのは常におっさん。小さな全体主義の罠に気を付けよう。”. 日経COMEMO. 2023年5月2日閲覧。
- “カズレーザー、2000年代生まれZ世代からの「老害が多すぎて嫌」相談に神回答 「秀逸」「さすが」の声”. スポニチ Sponichi Annex (2022年9月12日). 2022年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月17日閲覧。
- 「【米中間選挙】 Z世代の連邦下院議員が誕生、女性やLGBT候補者も相次ぎ初当選」『BBCニュース』英国放送協会、2022年11月9日。2023年5月2日閲覧。
関連項目
- デジタルネイティブ
- 脱ゆとり世代(Z世代と同世代とされることがある。ただし、脱ゆとり教育をすべての学年で受けた年代は移行措置を含めても2002年度生まれ以降となる)
- コロナ世代
- バブル世代 - 団塊ジュニア (Z世代の親世代)
- ON THE PLANET - ニューヨーク 在住の女性ジャーナリストのシェリーめぐみが「NY Future Lab ミレニアル・Z世代研究所」というコーナーで「これからの時代の主役となる『Z世代』と『ミレニアル世代』にフォーカスする」と「Z世代評論家 シェリーめぐみ」としてインタビュー形式でニューヨーク在住の都市部の若年富裕リベラル層(ジェネレーションレフト)の主張や状況を伝えていた。
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