シンフォニエッタ (ダール)

シンフォニエッタ』(Sinfonietta, for Concert Band)は、インゴルフ・ダールが作曲した吹奏楽曲

楽曲

全米大学バンド指導者協会(CBDNA)西部・北西支部(Western and Northwestern Regions)の委嘱を受けて1961年に作曲。初演は1962年1月12日、ダールが勤務していた南カリフォルニア大学のトロージャン・シンフォニックバンド(Trojan Symphonic Band)、ウィリアム・シェーファー(William Schaefer)の指揮で行われた。初演後改訂が行われ、1969年に出版されている[1]

ストラヴィンスキーに影響を受けたダールによる、新古典的な手法で書かれている[2]。ダールの作品を代表するものの一つであり[3]1949年に作曲、1953年に改訂された「サクソフォーン協奏曲」とともに、吹奏楽作品のなかでも特に優れたものとして評価されている[4]。ソリスティックで透明、色彩的な書法は吹奏楽のレパートリーにおける新たな視点からの貢献であり、のちの作品に影響を及ぼしている[5]

ダールはこの作品を「生涯書きたかった作品」と言及している[6]。もとになったのは委嘱前に作曲に着手していた「吹奏楽のためのセレナード」で[7]、作曲を始めるにあたってダールは、ハイドンモーツァルトベートーヴェンセレナードを参照していた[6]。また「サクソフォーン協奏曲」が1953年に改訂されるにあたって削除された素材も転用されている。

楽器編成

一般的なコンサート・バンド編成のために書かれている。

編成表
木管金管
Fl.2, Picc. 1(Fl.持替)Crnt.3 (or Tp.)Cb.
Ob.2 (C.A.1持替)Hr.4Timp.
Fg.2Tbn.3大太鼓シンバル付), シンバル(クラッシュ2, サスペンデッド3), 小太鼓2, テナードラム, トムトム, トライアングル, カスタネット, タンバリン, サンドペーパーブロック, ウッドブロック, むち, タムタム, グロッケンシュピール, シロフォン
Cl.3, E♭, Alto, BassEup.1
Sax. Alt. 2 Ten. 1 Bar. 1Tub.

構成

3楽章からなり、演奏時間は20分程度。楽章単独での演奏も可能とされているが、各楽章の動機や構成は密接なつながりがある。全曲にわたって和声や旋律の基礎となっているのはA♭-E♭-C-G-D-Aの六音で、ダールによれば「調性的で、変イ長調を軸にしている」[2]

  1. 序奏とロンド(Introduction and Rondo)
    Moderato e dolce - Allegro con brio、2/4拍子。静かな序奏と華やかな主部からなり、主部は題名通りのロンド形式で、ソナタ形式が重ね合わせられている[8]
    この楽章には、既存の吹奏楽のレパートリーへの意識がうかがえる。チューニングに使われる変ロ音から始まり、序盤にはバンダトランペットが現れ、打楽器の定型的なリズムが楽章を締めくくる[9]。また後半に現れるクラリネットセクションのユニゾンは、南カリフォルニア大学のバンドがウェーバーコンチェルティーノをユニゾンで演奏していた記憶が反映している[6]
  2. 牧歌的夜想曲(Pastoral Nocturne)
    Andantino con moto、12/8拍子。変ニ調が中心となる。静かな緩徐楽章で、トゥッティは一度も現れない[2]。ダールはフーガワルツガヴォットが含まれていると述べている[9]。「ガヴォット風に」("quasi gavotta")と記された中間部を軸にシンメトリックに構成されており[8]、楽章の最後にはアルトクラリネットの珍しいソロが置かれる[2]
  3. 舞踏変奏曲(Dance Variations)
    Vivacissimo、3/4拍子。基本の六音に基づく音型が奏されて始まる。この動機がオスティナートとなり、パッサカリア風に展開していく[10]三部形式に近い構成の主部に続いて、コーダは第1楽章の序奏と同じ素材に基づいており、全体のシンメトリックな構造を形づくる[11]。最後は静かに締めくくられるが、強音によるコーダも用意されている。

注釈

  1. Weinstein, Michael H. "Sinfonietta for Concert Band - Ingolf Dahl" Teaching Music through Performance in Band, Volume 1. (2nd ed.) GIA Publications, 2010. p.933.
  2. Weinstein, p.934.
  3. Rettie, Christopher Scott "A performer's and conductor's analysis of Ingolf Dahl's for Alto Saxophone and Wind Orchestra" (Louisiana State University, 2006) p.8.
  4. ジェイ・ギルバート(Jay W. Gilbert)による調査では、吹奏楽レパートリーにおける芸術的な成果と見なされている作品の上位5作に入っている。(Weinstein, p.933.)
  5. Teaching Music through Performance in Band. GIA Publications, 1996. pp. 461-462
  6. notes (PDF) for United States Marine Band, Michael J. Colburn "Originals" Michael J. Colburn, 2006. pp.14-16.
  7. Anthony Linick, The Lives of Ingolf Dahl (AuthorHouse, 2008) p. 348.
  8. Teaching Music through Performance in Band. p. 462.
  9. Weinstein, p. 935.
  10. Weinstein, p. 937.
  11. Teaching Music through Performance in Band. p. 463.

外部リンク

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