キャンバ角

キャンバ角(キャンバかく、英語: camber angle)は、車両の車輪によって作られる角度の1つである。具体的には、前もしくは後ろから見た時の車輪の垂直軸と車両の垂直軸との間の角度である。反り角キャンバー角とも呼ばれる。ステアリング懸架装置(サスペンション)の設計において用いられる。もし車輪の上端が下端よりも外側にある(すなわち、車軸から離れる)ならば、正キャンバ(ポジティブキャンバ)と呼ばれる。車輪の下端が上端よりも外側にあるならば、負キャンバ(逆キャンバ、ネガティブキャンバ)と呼ばれる。

1960年式ミリケン・MX1 "キャンバー・カー"。大きな負のキャンバ角が見てとれる。

操縦性に対する影響

前輪の負キャンバは操縦性を向上させるためにドリフト車において用いられる。

キャンバ角は特定のサスペンション設計の操縦性(ハンドリング)の質を変化させる。遠心力(外向きの力)は負キャンバを適用することによって釣り合いを取ることができる。負キャンバによってタイヤの接触面は外向きになるため、接地面積が最大化される。これは、旋回中の外側タイヤにのみ当て嵌ることに注意すべきである。内側タイヤは、ここでもショート・ロング・アーム・サスペンションでのみであるが、正キャンバから最大の恩恵を受ける。キャスタ角はこの角度を埋め合わせる。これは、外側タイヤの上端がわずかに内向きに傾いており、内側タイヤは外側に傾いているためである。

その一方で、最大直線加速度のためには、キャンバ角がゼロでトレッドが路面上で平坦の時に最大のトラクションが得られる。キャンバ角の適切な操作はサスペンション設計における主要な要素であり、理想的な幾何学的なモデルだけではなく、構成部品の実際の挙動(曲げ、歪み、弾性など)も織り込まなければならない。

調節機能

ダブルウィッシュボーン式サスペンションを持つ車では、キャンバ角は固定または調節可能であるが、マクファーソン・ストラット式サスペンションでは、通常固定である。キャンバ角の調節機能がなければメンテナンスの必要項目が減るが、短いばねを使って車高を下げている場合は、キャンバ角が変化する。度を超えたキャンバ角はタイヤの摩耗の増大と操縦性の障害につながる可能性がある。サスペンションを大幅に変更するには、それに応じて、キャンバ調整のために、車両の縦方向の中心線に対して内向きまたは外向きに移動できるように、アッパーコントロールアームまたはストラットの取り付け点を変更する必要がある。単なる穴の代わりにストラットマウント用のスロットを備えたアフターマーケットプレートは、一般的に改造された車のほとんどのモデルで利用できる。車輪のキャンバ角の変更を可能にする他のアフターマーケットソリューションがある[1]。偏心器付きのキャンバーボルトにより、一部の車両でキャンバを調整できる。これらのボルトは、偏心またはオフセットのいずれかである大きなワッシャーを備えている。元の機器のボルトを偏心ボルトに交換すると、調整によって最大2度の変化が生じます。調整可能なボールジョイントを備えたコントロールアーム(またはAアーム)は、並べて調整できるようにするためのもう1つの方法である。これらのコントロールアームを取り付けると、タイヤを動かすだけでタイヤキャンバを効果的に変えることができる。その後、ボールジョイントを希望の位置にロックするためにボルトを締める。キャンバ角を変更するためのさらに別のアフターマーケットソリューションは、長さを調整できる制御棒を使用することである。ただし、このソリューションは、Aアームではなく、制御棒を使用する車両にのみ適用できる。制御棒がサスペンション点の位置を特定し、それらを所定の位置に維持する責任を負うため、ロッドの全長の変更がキャンバ角に影響する。

不整地におけるキャンバ

タトラ製トラックは、セントラルチューブとスイングアクスル式サスペンションを包含するそのシャシ設計のため、かなり急なキャンバを持つ(写真はタトラ・815クレーントラック)。

農業用トラクターといったオフロード車両は一般的に正キャンバを用いる。こういった車両において、正キャンバ角は、より低い保舵力を得る助けとなる。また、ブッシュプレーン農薬散布用飛行機といった主に不整地からの操作が意図されている一部の単発一般航空機は粗い未舗装の滑走路に着陸するため、降着装置のたわみにより良く対処するための尾輪に正のキャンバを付けている。

出典

  1. Camber angle for racing cars: Explanation”. 2022年4月10日閲覧。

関連項目

外部リンク

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