キアンゾウサウルス

骨は江西省贛州近郊の工事現場の作業員にショベルカーで掘り当てられ[3]、地元の博物館に持ち込まれた。学名は「贛州のトカゲ」を意味する[4]。

通常ティラノサウルス類の歯は太く強靭で深く歯槽に収まっているが、キアンゾウサウルスの特徴的な上顎骨には長く薄い歯が浅く収まっている。巨大なティラノサウルス科とは異なり、小動物や魚類を捕食していたのではないかと言われている。また、その上面には小さく短い角が並んでいた[4]。

発見されたキアンゾウサウルスの骨格はアリオラムスと同様に細長い頭部を持ち、ティラノサウルスやタルボサウルスといった大型のティラノサウルス科と比べて華奢で小柄な体格であった。しかし、幼体あるいは亜成体の骨格しか発見されていないアリオラムスと違い、キアンゾウサウルスの骨格は明らかに成体のものである[3]。

全長は8 - 9メートル、体重は1トンと推定されている[3]。

中国地質科学大学の呂君昌教授はキアンゾウサウルスの発見をとても重要なものだと主張する。モンゴルのアリオラムスを含め、このような鼻面の長いティラノサウルス類はアジアに広く分布していた可能性がある。また、アジアの肉食恐竜の知られざる主要なグループについての研究の第一歩となる可能性がある[5]という。長い鼻面のティラノサウルス類の存在は以前から別の断片的な化石によって示唆されており、彼らは短い鼻面をもつ既知の種の若い個体かもしれないとされていたが、記載論文の共著者のエディンバラ大学のスティーブン・ブルサットは ｢この発見は鼻面の長いティラノサウルス類が確かな種であったことを明確に伝えてくれる。彼らは恐竜時代の終わりに生きていた別の血統だった｣[注 1]と述べた[6]。

キアンゾウサウルスの発見はティラノサウルス類の系統樹に新しい枝をもたらした。キアンゾウサウルスが発見されるまで、アリオラムスは独自の属であるかタルボサウルスの幼体であるかの論争が起き、膠着状態に陥っていた。しかし、アリオラムスに類似した形質を持つキアンゾウサウルスの成体が発見され[3]、キアンゾウサウルスとアリオラムスで構成されるアリオラムス族 Alioramini という小グループが命名された。他のティラノサウルス類との関係は今のところ不明瞭である。最初の系統解析ではアルバートサウルスよりもティラノサウルスに近いためティラノサウルス亜科に配置された。しかしながら同じ論文中に掲載された二度目の分析では、アルバートサウルス亜科にもティラノサウルス亜科にも属さないことになった。そしてティラノサウルス亜科の姉妹群ではないかと思われている[1]。

以下は記載者による最初の分析に基づくクラドグラム[1]。