カササギガン

カササギガン(鵲雁、Anseranas semipalmata)は、鳥綱カモ目カモ科[2]カササギガン属に分類される水鳥の1種である。本種のみでカササギガン属を構成する。

カササギガン
カササギガン
カササギガン Anseranas semipalmata
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: カモ目 Anseriformes
: カモ科 Anatidae[2]
: カササギガン属
Anseranas Lesson, 1828
: カササギガン A. semipalmata
学名
Anseranas semipalmata
(Latham, 1798)
和名
カササギガン
英名
Magpie goose

分類

本種は、カモ類に特徴的なくちばしの形を有しており、カモ科に分類されるが[3]、そのほかの形態や生態など、カモ科の構成種と相違点が多いことから、本種のみでカササギガン科 Anseranatidae を構成するとの説もある[4][5]

分布

セレンディップ・サンクチュアリ(オーストラリア、ビクトリア州)のカササギガン

オーストラリア[1]北部(西オーストラリア州ブルーム付近からクイーンズランド州ブリスベン周辺にかけての沿岸より300キロメートル以内[6])、およびニューギニア島インドネシアパプアニューギニア[1])南部のサバンナ地帯[2]、通常留鳥として自然分布する[4]

かつてオーストラリアには、南東部や東・北東部の沿岸にも広く分布していた[6]ビクトリア州では本種が再移入されている[4][6]

形態

全長およそ90センチメートル[7] (71-92cm[8])。翼開長およそ150-160センチメートル[8] (120-180cm[6])。

雌よりも雄のほうが大きく、頭頂にある瘤(こぶ)状の隆起がより顕著である[4][6]

雌雄の測定値および差異[4]
測定値
平均体重 2,766 g 2,071 g
翼長 36.8–45.0 cm[5] 35.6–41.8 cm[5]
跗蹠長 9.0–10.5 cm 8.0–9.2 cm
嘴長 7.2–9.2 cm 6.3–8.2 cm
頭頂 顕著な隆起 隆起
頭部

雌雄の羽衣は同色で[4]、頭部から頸部が黒く、体部は白い[5]。尾や[4]翼の色彩は黒いが[5]、翼下面の下雨覆、翼上面の雨覆および上背、腰は白い[8]。ほかのガン・カモ類と異なり、風切羽は徐々に抜け換わるため、飛翔できない期間はない[3][5]

頭部に瘤状の隆起がある[3]のあるくちばし[8]から眼にかけて羽毛がなく、ピンク色の皮膚が裸出する[5]虹彩はオレンジ色[5]。脚は橙黄色で長い[8][6](あしゆび)は、第1趾が長く、第2-4趾の間には水かきがあるがあまり発達しない[3][5]。気管が非常に長い[5]

生態

湖沼湿原[7]氾濫原などの、通常は沿岸から80キロメートル以内の地域に生息し[4]、小規模な群れを形成して生活するが[5]、条件に恵まれた場所では大群となる[4]

食性は植物食で、植物の葉、根などを食べる[5]。湿原などを歩き回って食物を探し[7]、また水上を泳ぎ逆立ちして採食する[4]。親は雛(ひな)にくちばしで咥えた食物を与える[3][5]

やや分散した集団繁殖地(コロニー)を形成する[5]。繁殖は10-11月[7]の雨季により始まり[4]、オーストラリア北部では1-4月(南東部7-11月)、沼地の地表や水生植物の上に[7]深い椀形の巣をつくり、しばしば染みのある乳白色や灰白色の楕円形の卵を、平均約8個(1-16個)産む[6]。雄1羽と雌2羽で抱卵し、抱卵期間は28日[5]

鳴き声は、大きくてよく響き、雄のほうがより大きく高い声を発する[4]

人間との関係

生息地では卵も含めて食用とされることもある[5]

参考文献

  1. Anseranas semipalmata in IUCN Red List of Threatened Species. Version 2014.2.”. 国際自然保護連合 (IUCN). 2014年8月3日閲覧。
  2. Clements, James F. (2007). The Clements Checklist of Birds of the World (6th ed.). Ithaca, New York: Cornell University Press. p. 26. ISBN 978-0-8014-4501-9; Updates, Clements Checklist 6.8 (Downloadable Checklist) (2013年8月). 2014年8月3日閲覧。
  3. 黒田長久監修、C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 編『動物大百科7 鳥類I』平凡社、1986年、105-108頁。ISBN 4-582-54507-6。
  4. Madge, Steve; Burn, Hilary (1988). Wildfowl: An Identification Guide to the Ducks, Geese and Swans of the World. Helm Identification Guides. Christopher Helm. pp. 30, 123. ISBN 0-7136-3647-5
  5. 黒田長久、森岡弘之監修 『世界の動物 分類と飼育 (ガンカモ目)』、財団法人東京動物園協会、1980年、24-26頁。
  6. Pizzy, Greham (1997). Field Guide to the birds of Australia. Australia: Angus & Robertson. pp. 32-33. ISBN 0-207-19691-5
  7. 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館2002年、145頁。
  8. Simpson, Ken (1999). Field Guide to the birds of Australia (6th ed.). Australia: Viking. pp. 52-53. ISBN 0-670-87918-5

関連項目

外部リンク

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