おむつ
概要
主として、赤ちゃん(乳幼児)や一部の高齢者・障害者・入院患者など、排尿や排便を自己の意思で制御できない者や、体の自由が利かないためにトイレに行くことが困難な者が使用する。また、普段はトイレで用を足せるが、失禁・過敏性腸症候群・夜尿症などを患っている人の対策としても使われる。
基本的には乳幼児・高齢者・障害者・病気を理由に使用する例が殆どであるが、特殊な例としては、長時間不自由な状況下に置かれる以下のような職業で使用されることがある。
- 宇宙飛行士(打ち上げや地球への帰還時に、10時間近くトイレに行けないケースがあるため[1]。)
- マラソン・駅伝中継で、実況車やオートバイでの解説者・実況アナウンサー(マラソン中継は3時間弱、駅伝は長いもので6時間程度の中継時間となり、その間はトイレに行けないため[2]。)
犬や猫などのペットに使わせる場合もある。ペット専用の物は尻尾を通す穴がある物もある。
尿や便の水分を保持する目的から吸水性を求められ、水分の漏れを防ぐために防水性のある素材で外側を覆い、脱落を防止するために固定、あるいはゴム状の素材などである程度締め、固定する必要がある。肌に直接触れ、かつ特に肌の弱い乳幼児に使用される性質上、素材の肌触りもまた重視されている。
語源
古来よりの言葉「むつき(襁褓)」が口語として変化したものとする説と、1反のさらしから6枚分のおしめが取れることからおむつと呼ぶようになったとする説がある。 ちなみに、源氏物語の桐壷の巻に、光の君(光源氏)が繦緥(むつき)にくるまれていたという記述があるが、古来よりの言葉「むつき(襁褓)」は、嬰児の産着を指していたのであって、現代のおむつ(おしめ)を指していたのではない。
布おむつ
形式
綿やポリエステルなどの布製のおむつ。輪型のドビー織のおむつや形成おむつ、ポケット式の形成おむつなどの種類がある[3]。
吸水性のある布や綿でできた吸水部分を股間にあて、全体を覆うようなカバーを使って体に密着するように固定する。おむつもカバーも、洗濯して繰り返し使用する。おむつとカバーが一体化したオールインワンと呼ばれる形式もある[3]。
利用
乳幼児用の輪型のおむつの場合には重ねて使用するが、乳幼児の月齢に比例して尿量が多くなると重ねる枚数が増えるため、通気性を考慮する必要 がある[3]。
おむつは1日に多いときは20回ほども替えるので最低で20組、余裕をもたせるには30-40組ほどは必要になる。おむつカバーは4-5枚、赤ちゃんの成長に合わせてサイズの大きい物に買い替える[4]。
1970年代までの日本では、三角おむつや巻きおむつと呼ばれる腰に巻きつけるようなおむつの当て方による股関節脱臼児が多かった為、1980年代以降、布おむつは股おむつと呼ばれる当て方で使用するように徹底的な指導が行われた。
布おむつと紙おむつの摩擦感を比較した試験では、紙おむつの方が滑らかとする結果が出たが、洗濯による布の劣化の影響もあると考えられている[3]。
乳幼児用
- 布オムツ(ニシキ、アカチャンホンポ)
- コンパクトおむつ(ニシキ)
- ベビーネンネ(キングベビー)
- ナカタ(ナカタ)
- アイイク(三矢)
- 天使PAD(育児文化研究所)
- 赤ちゃん工房のおむつ(赤ちゃん工房)
- ウォッシャブルダイアパー(クーシーズ)
- ファジバンズ(ファジバンズ)
- ラッキーオムツ、ソフトベビー(エンゼル)
- シンク・ビーのおむつ(シンク・ビー)
大人用
- ニシキ
- ANGEL (日本エンゼル)
- P! (ピップ)
- ピジョンタヒラ
- O&P (ラフィーネ)
- 懐古堂
- Feline Babies
- 童夢
使い捨ておむつ(紙おむつ)
紙おむつは、表面材、吸水材、防水材、止着材、伸縮材、結合材などから構成され、このうち吸水材に吸収紙、綿状パルプ、高分子吸収材などを用いているものである[3]。かつての使用素材は紙や綿やパルプであったが、1980年代以降は高吸水性ポリマーや不織布を使用するなどの工夫により、布おむつを凌ぐ性能を有するようになっている[6]。
- 表面材 - 直接肌に接する部分で、尿を素早く吸水材に送り、表面材自体は乾いた状態を保ち、着用中の快適性を向上させる役割がある[7]。
- 吸水材 - 吸収紙、綿状パルプ、高分子吸水材などを組み合わせたもので、高分子吸水材は自重の50~100倍もの尿を吸収できる[7]。吸水コアに使用される高吸水性樹脂(SAP)はポリアクリル酸ソーダなどである[8]。
- 防水材 - 紙おむつの外側を覆う防水シートで一部の製品では水分を通さず通気性のある材質が使われているものもある[7]。
歴史
世界初の乳児用紙おむつは1940年にスウェーデンで誕生した[8][9]。当時、スウェーデンではドイツによる経済封鎖で綿布が不足しており、紙を重ねてメリヤスの袋で覆った紙おむつが開発された[8]。このおむつはヨーロッパスタイルと称され、第二次世界大戦後にアメリカに伝わってさらに発展を遂げた[8]。
日本では1950年頃に初めて紙おむつが発売された[8]。1977年にはアメリカからテープで止めタイプの紙おむつが輸入された[8]。日本の国産のテープ型紙おむつは1981年に発売された[8]。
一方、大人用紙おむつは1962年にクレープ紙を重ねたフラット型のものがまず誕生した[9]。
1974年にはアメリカで自重の200~1000倍の水を吸収できる高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer ; SAP)が開発された[8]。1978年には世界で初めて日本企業が高吸水性樹脂(SAP)の商業生産を開始し、さらに1983年には世界で初めて日本企業が高吸水性樹脂(SAP)入りの紙おむつを発売した[8]。この高吸水性樹脂(SAP)入り紙おむつは、薄くてコンパクトなことや、取り換え回数が大幅に減少できるなどの特長を持ち広く普及した[8]。
さらに1991年にはベビー用パンツタイプ紙おむつ、1994年には大人用のパンツタイプが発売された[8]。特に大人用のパンツ型は被介護者が自ら装着することができ、高齢者の排泄自立に貢献した[8]。
種類
紙おむつの種類には乳幼児用と大人用がある[10]。
乳幼児用
乳幼児用の紙おむつの形状には、フラット型、テープ型、パンツ型がある[10]。2000年代後半以降、おねしょや夜尿症・昼間の失禁を抱える小学生以上の者の使用にも視野を入れた「ビッグより大きいサイズ」「スーパービッグサイズ」のラインナップが拡充している。
大人用
大人用の紙おむつの形状には、フラット型、テープ型、パンツ型のほか、尿取り用パッドと失禁用パッドがある[10]。
高齢者や障がい者向けの需要がほとんどを占めるが、概ね4歳以上の肥満体等で乳幼児用紙おむつのサイズが合っていない子供や、比較的年齢の若くて心身に特に障害がない成人健常者でも、失禁や頻尿、夜尿症、過敏性腸症候群などの症状を抱えていたり、またそれがなくても高所、深海[11]、宇宙空間[12]での作業、駅伝やマラソン等のスポーツ中継のアナウンサーの実況等、特殊な環境下に拘束される業務に従事し長時間トイレに行けない者、そして変わった所ではバラムツやアブラソコムツ等の有害魚類を食した時の油脂が肛門から漏れるのを防止する際[13]にも使用する事もある。
テープ止めタイプ
テープ止めタイプはフラットタイプのおむつにおむつカバーの機能の一つである面ファスナーの固定部と横漏れ防止のギャザーを一体化させたものであり、基本的におむつカバーは不要である[注釈 1]。乳幼児用と大人用では形状が違い、大人用の方が股上部分が大きく[14]、臍まで隠れやすい。当て方は使用者を仰向けに寝かせ(仰臥位)、テープが取り付けられている部分を後ろにして、仰向けのまま下半身を持ち上げるか、使用者の体を持ち上げて横に動かし側臥位にして、お尻にあたる部分におむつを差し込む[注釈 2]。この時汚れたおむつがある時は、汚れたおむつの下に新しいおむつを敷き、汚れたおむつを開いて局部を清拭したあとに汚物の付着に注意しながら汚れたおむつを抜く。次におむつのギャザーに合わせてお尻を乗せ、性器を包むようにテープ固定部のライン表示が入った側を前にして当て、左右のラインの位置が均等になるように乳幼児用は2つ以上、大人用は4つ以上のテープで固定する。ズボンを完全に脱がさなくても交換でき、コスト的にも比較的安価であるが、使用者を寝かせて装着・交換する必要があり、ベッドや布団などの寝かせるスペースが必要であるため、外出先でもベビーベッドや授乳室などの寝かせるスペースを確保しやすい乳幼児はともかく、ユニバーサルベッド[注釈 3]を設置してあるトイレの位置を把握しなければならない大人のお出かけ用にはあまり向いていない。そのため、自由に歩ける前の赤ちゃんや寝たきりの者に使われることが多く、自分で歩ける人でも寝ている状態ではパンツタイプより吸収体が大きくて漏れにくいことから就寝用に使われることが多い。乳幼児の場合は子供が立てるようになり活発に動き、じっとしていなくなると子供が立ったままでもおむつを交換できるパンツタイプが便利なため、「Lサイズ」前後でテープ止めタイプからパンツタイプに変える人が多く、テープタイプは「ビッグサイズ」を取り扱う銘柄が少なくなっている[注釈 4]。また、大人用は乳幼児用とは異なりパッド併用を前提とするため、吸収体が薄かったり、ドーナツ状になっている製品も見られる。かつての製品は外側の素材がビニール剥き出しであったが、各社とも乳幼児用は1990年代後半以降、大人用は2000年代前半以降の製品からビニールから不織布へと変化し、肌触りが改良されている。
パンツタイプ
パンツタイプはゴムのシャーリングが入った不織布製の使い捨てパンツとギャザー・吸収体が一体化したものである。ユニ・チャームが最初に開発し、乳幼児用は1992年[15]、大人用は1995年に登場した[16]。ブリーフやショーツといった下着と同じ感覚で交換でき、自分で歩ける人のお出かけ用や、ある程度立ち上がれる人のトレーニングパンツ的な用途に向いている。しかし、ズボンを完全に脱がさないと交換できず、寝ている状態ではテープ止めタイプに比べて漏れやすいため、寝たきりの者の使用には向かない。また価格が最も高価である。パンツタイプの方がウンチが漏れにくいという意見もある一方で、ポイントを押さえ、慣れればパンツタイプが楽だがウンチの時にはコツが必要という人もいる[17]。大人用にはパンツタイプとテープ止めタイプの中間的な製品として、ズボンを完全に脱がさなくても交換できるように、パンツタイプながらもテープでも固定ができる製品が発売されている。
乳幼児用のパンツタイプの中には特殊用途として、ハイハイ用、トイレトレーニング用、おねしょ(夜尿症)対策用、水遊び用パンツも発売されている。ハイハイ用は「Sサイズ」から「Mサイズ」相当、それ以外の展開サイズは「Lサイズ」と「ビッグサイズ」(ただし水遊び用パンツは「Mサイズ」を追加)である。トイレトレーニング用は吸収体の表面におしっこの水分が付着すると濡れた感じがするような加工が施され、商品によっては絵柄の色が変わるように施されているものもある。おねしょ対策用は長時間おむつを取り替えなくても漏れないよう、昼間用の紙おむつより吸収体を強化し、商品によっては布パンツの質感に近づけたものもある[18]。ビッグより大きいサイズ、トイレトレーニング用、おねしょ対策用おむつは月齢の高い子供が穿くことが多いため、パッケージ表面には「パンツ」の文字が強調され「おむつ」の文字が目立たなくなっているが、日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示では他の製品と同様に「乳幼児用紙おむつ」と表示されている。一方で水遊び用パンツは海やプールでの水遊び用に便漏れ防止のギャザーのみ付いており吸収体が入っておらず、尿や軟便はすり抜けていくため、日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示にもある通り、厳密には「おむつ」ではなく「使い捨てパンツ」である。単独でも水着と併用でも使用できるが、プールによっては水遊び用パンツを含めたおむつ着用を禁止しているところもあるため注意が必要である。
フラットタイプ
フラットタイプは布おむつをそのまま紙おむつに置き換えたものである。紙おむつの登場時からあり最も歴史が古く、排便に対応するおむつでは最も安価であるが、布おむつと同様におむつカバーとの併用が必要である。そのためお出かけ用には全く向いていない。
主な使い捨ておむつ(紙おむつ)のブランド
テープタイプ・パンツタイプ両方あり
この他、トイザらス(NEWウルトラプラス)・イオングループ(トップバリュ ベビーオムツ)等、プライベートブランドのおむつを販売しているケースがある。
パンツタイプのみ
- ムーニーマン(ユニ・チャーム)
- ナチュラルムーニーマン(ユニ・チャーム)- ムーニーマンの上位版。
- マミーポコ(ユニ・チャーム)
- ネピア GENKI!(王子ネピア)
なお、ユニ・チャームは日本国内においては上記のとおり「ナチュラルムーニー(マン)」「ムーニー(マン)」「マミーポコ」と3種類のブランドを使い分けている。「ナチュラルムーニー(マン)はオーガニックコットンを採用しており品質・機能性最重視、「ムーニー(マン)」は中間、「マミーポコ」は経済性(価格)重視のブランドとなっている。なお、2020年現在は全てのテープタイプ及びパンツの新生児・Sサイズ・Mサイズ(はいはい)・スーパーBIGサイズは「ナチュラルムーニー(マン)」・「ムーニー(マン)」のみの展開である。(2018年までは「マミーポコ」もテープ止めタイプを発売していた。)海外では「マミーポコ」がメインブランドとなっており、テープ止めタイプも引き続き展開、台湾では「ナチュラルムーニー(マン)」相当の商品も「マミーポコ」ブランドで発売されている。
トイレトレーニング用、おねしょ(夜尿症)対策用、水遊び用おむつ
乳幼児・幼児・幼稚園児用紙おむつの起用キャラクター
- ムーニー、ムーニーマン:新生児用からビッグより大きいサイズまではムーニーちゃん(2019年まではディズニーキャラクター。主にくまのプーさん、期間限定でディズニープリンセス、トイ・ストーリー等)、スーパービッグの男の子用は昆虫柄や自動車柄、女の子用は花柄
- マミーポコ:ドラえもん(2019年まではディズニーキャラクター。主にミッキーマウス、期間限定でリロ・アンド・スティッチ、チップとデール等)
- パンパース:しまじろう(新生児用・「はじめての肌へのいちばん」シリーズは動物柄[注釈 5])
- GOO.N:ディズニーキャラクターのミッキーマウス、くまのプーさん(パンツタイプ「まっさらさら通気」のみ。「GOO.Nプラス」・新生児用3Sサイズ・「ビッグより大きいサイズ」は動物柄、「スーパーBIGパンツタイプ」・「ナイトキッズパンツ」・「ナイトジュニアパンツ」はストライプ柄、「スーパーBIGテープ止めタイプ」は星柄とギンガムチェック柄。)[注釈 6]
- メリーズ:ウサギに似た異星人7匹(タンピーくん、ピコンちゃん、ポワンちゃん、クスクスくん、パンジーちゃん、ブウンくん、ラッピーくん )
- ネピア GENKI!:アンパンマン
- ネピア Whito:動物柄
- NEWウルトラプラス:スヌーピー(ピーナッツ)、きかんしゃトーマス、サンリオキャラクター
- トップバリュ ベビーオムツ:動物柄
かつてあったブランド
日本国内で発売されたブランドのみ記載。
- 現在も乳幼児用紙おむつを発売するメーカー
- 王子ネピア
- ドレミ - 末期は水森亜土が手がけたキャラクターがパッケージイラストに起用されていた。2006年に「GENKI!」へ移行。
- 大王製紙(エリエール)
- ユニ・チャーム
- ムーニーパンツ - 2010年に「ムーニーマン」から「ムーニーパンツ」へ移行するも、2013年8月〜11月(サイズにより異なる)に「ムーニーマン」に回帰。
- 乳幼児用紙おむつから撤退したメーカー
- エルモア
- ミミーママ
- 資生堂
- ピンポンパンツ
- CHAOPA
- ちゃおぱ - ちゃおパンダというキャラクター名のパンダ柄であった[21]。
- 日本製紙クレシア
- パンピー
- リブドゥコーポレーション(旧トーヨー衛材)
- ぴぴ - テープ止めタイプのみのブランド。
- ピーターパンツ - パンツタイプのみのブランド。末期は「ピーターパンツ ウルトラビッグサイズ」のみ発売し、「リフレ はくパンツジュニアSSサイズ」(大人用紙おむつ扱い)へ移行。
乳幼児用おむつの利用
欧米
- 欧米ではおむつが普及しており、紙おむつが主流である。おむつ外れの年齢が遅いのと、体格の大きい赤ちゃんが多いことから、ビッグサイズの紙おむつが充実している。
- 欧米ではアジアに比べておむつの使わなくなる時期は遅く、2~4歳くらいまで紙おむつを使うのが一般的である[22]。
- イギリスやアメリカなど欧米では1歳を過ぎてもテープタイプの紙おむつのほうが人気があり、おむつ交換台のある公共トイレが少なく、ズボンを履いて立ったまま交換できるテープタイプの方が使い勝手がよいことが背景にあるとされる[22]。
- 欧米では、化学物質を控えたエコ紙おむつが利用されることも多い[22]。
- イギリスやドイツでは布おむつを推進する動きがあり、南ドイツではごみの削減運動の一環として布おむつの貸し出しや布おむつを使う家庭へ助成金を出している自治体もある[22]。
- 欧米では紙おむつのサイズ展開が豊富で、20kg以上とかなり大きな体格でも使用可能な紙おむつが販売されている[22]。又、主におねしょや夜尿症対策向けに、中高生から20歳程度の体格、即ち体重60kg程度の者でも使用可能な紙おむつも多数出回っている。
アジア諸国
- アジアでは乳幼児が一日中おむつをつける習慣が一般的でない国もある[22]。
- アジアでも経済発展に伴い都心部から紙おむつの普及率が高くなってきている[22]。中国では2000年代に入り富裕層が増加すると、徐々に紙おむつが普及し始めた[23]。
- 中国では、2013年の一人っ子政策緩和頃からメリーズを主とした日本製紙おむつの人気が高まる。それに伴い、日本の販売店において中国での転売目的も含めた紙おむつの爆買いが発生し、品薄状態を危惧した店舗側で販売個数制限を設けたり、商品購入を巡るトラブルなどの問題が起きている[24][25][26]。
- 発展途上国では紙おむつは高級品であり、インドネシアなどでは雑貨店や薬局で一枚ずつ購入できるようになっている[22]。
- 日本以外のアジアの国ではおむつの使わなくなる時期が早い傾向にあり、その背景には経済的理由で自由に使えないこともあるが、1歳くらいには自分でトイレに行けるようになる子どもが多い[22]。
- アジア諸国ではおむつの使用期間が短いために、紙おむつのサイズ展開が少なく、大きなサイズの紙おむつは手に入らない場合がある[22]。
日本国内
- 日本では2000年代後半頃から、「スーパーBIGサイズ」や「ビッグ」「ビッグより大きいサイズ」の需要が増してきている。背景には、「子供の成長に合わせておむつを外す」という考え方へのシフトが見られ、おむつが取れる年齢が遅延化していることが挙げられる[27]。又、小学生や中学生のおねしょや夜尿症対策でおむつを使用する者も少なくなく、体重20㎏以上の者でも使える様なおむつのラインナップが拡充している。
大人用おむつの利用
- 欧米ではテープタイプやパンツタイプ(アウター)など、単体で使用する単体使用方式が一般的である[8]。
- 日本ではアウターに尿取りパッド類(インナー)を組み合わせ、インナーのみ取り換えるツーピース方式が一般的である[8]。
- ISO 15621-2017は、コストが安価であること、介護労力を軽減できること、ごみの削減と資源の有効利用ができること、交換が容易で着用者の快適性が向上できることからツーピース方式を国際規格としている[8]。
- 日本では一定の要件を満たす場合に大人用紙おむつの全ての商品は所得税の医療費控除の対象となり(児童の場合にも、病気やケガで寝たきりの状態にあり、医師が紙おむつの使用が必要と認める場合には医療費控除の対象となる)[33]、乳幼児用ではGOO.Nスーパービッグが唯一医療費控除の対象商品となっている。
ペット用おむつ
日本ではユニチャームが製造しているマナーウェアだけである。マナーウェアは犬用は2015年、猫用は2020年に発売した。 なお、マナーウェアは大型犬には非対応。
廃棄物の問題
おむつを乳幼児・幼児に使用する場合、1日5回から10回程度と、頻繁に交換使用される。布おむつの場合汚れた部分を洗い流し、何度かリユースすることができるが、使い捨ておむつの場合、リユースやリサイクルを前提には作られておらず、吸水部分のみならず、体に固定するカバーに相当する部分も含めて捨てざるを得ない。
イギリスでは下水道に流す者もおり、しばしば下水道内で異物(ファットバーグ)を成長させて詰まらせる原因となる[34]。
日本においては大量の廃棄物を出す原因として、ゴミ処理を行う側の自治体や環境問題に熱心な人々から問題視されることがある。廃棄方法は自治体によって違う可能性はあるが、基本的には、汚物をトイレに捨て、おむつ本体は可燃物として廃棄するよう求められている。また、紙おむつに着いた便をそのままにしてごみに出した結果、収集車がごみを詰め込む過程で破裂してし尿が飛び散るという事故が頻発したことや、乳幼児が外出時に交換した使用済み紙おむつを公園などに捨てることが多発した報告を受け、メーカー側は紙おむつのパッケージに使用済み紙おむつの処分方法のマナーを絵表示している[35]。
2019年10月17日、ユニ・チャームが使用済み紙おむつを原料に新しい紙おむつを製造するリサイクル技術が完成したと発表。2021年春に発売を予定している[36]
脚注
注釈
- 認知症患者などのおむつ弄り防止のため、紙おむつの上から装着するおむつカバーが市販されている。 (紙おむつ用ホルダーの一例)
- 体重が軽い乳幼児や中人(主に小学生までの子供)は前者、体重が重い大人や、乳幼児・中人でも体格が大きかったり、肢体不自由児の場合は後者の差し込み方が多い。
- 一部の公共施設や商業施設の多目的トイレなどに設置してある、大人用のおむつ交換に使用できる折りたたみ式ベッド。(ユニバーサルベッドの一例)
- パンツタイプが普及する1993年頃までは新生児用からビッグサイズや夜尿症対策用に至るまでテープ止めタイプが主流であった。
- 2008年以前は、全サイズで パンパ(おむつを履いたゾウのキャラクター)を採用。
- 2020年以前はテープタイプ及びパンツタイプでいないいないばあっ!、パンツタイプのみパンツぱんくろう・ポコポッテイトを起用(いずれもNHKのEテレで放送された乳幼児向け番組のキャラクター)。
出典
- “トイレ機能付き宇宙服、NASAが3,4年後めど開発 6日着たままOKで地上の生活も変える?”. 産経新聞. (2017年1月8日) 2022年1月8日閲覧。
- “箱根駅伝、中継車アナは「おむつを履く人も」 元日テレ・羽鳥アナ明かす”. デイリースポーツ. (2022年1月4日) 2022年1月8日閲覧。
- 竹下 友子、甲斐 今日子「乳幼児用おむつの性能評価と課題」『佐賀大学教育学部研究論文集』第1巻第1号、佐賀大学教育学部、2016年8月、107-116頁。
- 『はじめて出会う育児の百科』汐見稔幸、榊原洋一、中川洋子 著、小学館、2003年、93と158-160頁
- 授乳・オムツ換え専用車両「ポペッツタウン号」の設置について - プレスリリース 横浜元町ショッピングストリート 20090131
- 紙おむつの歴史
- “紙おむつの構造”. 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会. 2023年4月18日閲覧。
- 日本製紙クレシア株式会社. “紙おむつの構造と技術開発”. 東京高輪病院 地域医療機能推進機構. 2023年4月18日閲覧。
- “紙おむつの歴史”. 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会. 2023年4月18日閲覧。
- “使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン”. 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室. 2023年4月18日閲覧。
- Webナショジオ - インタビュー中川翔子 第2回「しんかい」に乗って奇跡の旅へ
- GIZMODO - 宇宙飛行士は全員オムツを愛用って知ってた?(動画あり)
- バラムツ・アブラソコムツは人体で消化不可能な有害油脂であるワックスエステルが大量に含まれており、食べると下痢や便意無しで肛門から油脂が漏れる等する為、食品衛生法では販売が禁止されている魚類であるが、一部の愛好家らが釣りで漁獲した物を食する事がある。
- リブドゥコーポレーション ベビー用より大きく大人用より小さいサイズ 開発者の声 Archived 2014年1月7日, at the Wayback Machine.
- ユニ・チャーム社史 1992年 はかせるオムツ『ムーニーマン』発売
- ユニ・チャーム社史 1995年 『ライフリー リハビリ用パンツ』発売
- 『ひよこクラブ』2012年3月号80-84項
- ユニ・チャーム 夜用キッズパンツ オヤスミマン
- エリエール - 「GOO.N」ベビー用紙おむつのあゆみ
- 江村信一キャラクターアートの世界
- ベビカム - 新しい紙おむつブランドが誕生!(2012年4月5日)
- “海外のおむつについて知りたい!各国の事情や日本との違いについて”. TENITEO. 2023年4月18日閲覧。
- “日本製の紙おむつ買いまくる中国人…「股割パンツ」いらずで電車で用を足す「大便小僧」も一掃”. 産経新聞社. (2014年10月31日) 2014年11月1日閲覧。
- “消えた「メリーズ」…中国人買い占め、転売で〝ボロもうけ〟ついに捜査のメス”. 産経WEST (産経新聞). (2015年1月4日) 2016年10月21日閲覧。
- “紙おむつ爆買いめぐり中国人ら乱闘 数人けが 以前同じ売り場で口論した客同士が鉢合わせ”. 産経WEST (産経新聞). (2015年8月8日) 2016年10月21日閲覧。
- “また紙おむつ爆買いトラブル…中国籍の女が手提げカバンで店長殴り逮捕 和歌山”. 産経WEST (産経新聞). (2016年1月21日) 2016年10月21日閲覧。
- “『ムーニーマン スーパーBig』新発売!”. ユニ・チャーム (2007年8月9日). 2011年5月4日閲覧。
- “南太平洋の島国バヌアツ、プラごみ削減で使い捨ておむつ禁止へ”. AFP (2019年2月22日). 2019年2月22日閲覧。
- 「おむつなし育児とは?」 おむつなし育児研究所
- 「日本におけるおむつなし育児の展開」 おむつなし育児京都サロン
- 横山 萌莉、春名 めぐみ、米澤 かおり、笹川 恵美、疋田 直子「乳幼児のおむつ皮膚炎の有病率とその関連要因に関する文献レビュー」『日本助産学会誌』、日本助産学会、2016年8月、107-116頁。
- “おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)”. 第一三共ヘルスケア. 2023年4月18日閲覧。
- “Q. 大人用紙おむつが医療費控除の対象と聞きました。医療費控除とはどのようなものですか。”. 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会. 2023年4月18日閲覧。
- “油脂の塊「ファットバーグ」がロンドンの下水管をつまらせる”. GIZMODE (2017年10月1日). 2021年5月2日閲覧。
- “日衛連紙おむつNews No.57” (PDF). 社団法人 日本衛生材料工業連合会 (2016年1月1日). 2019年1月8日閲覧。
- 世界初の事業化へ、紙おむつリサイクル技術が完成した!ユニ・チャーム、使用済みを原料に