エンゼル館
エンゼル館（エンゼルかん、英語: Engel Kwan）は、かつて存在した日本の映画館である。のちに松竹エンゼル館（しょうちくエンゼルかん）と改称した[注 1]。
| エンゼル館 Engel Kwan | |
|---|---|
 サイレント時代の絵葉書 | |
| 情報 | |
| 正式名称 | エンゼル館 |
| 完成 | 1913年 |
| 開館 | 1913年 |
| 閉館 | 1968年 |
| 用途 | 映画上映 |
| 所在地 |
北海道札幌区北3条西3丁目 （現在の北海道札幌市中央区北3条西3丁目） |
| 最寄駅 | 札幌駅 |
概要
ジェームズ・ガーディナーのガーディナー建築事務所の技師荒木賢治が設計・施工した[2]。経営したのは、江戸・本所出身の佐藤市太郎で、1907年（明治40年）に旭川、1910年（明治43年）に札幌、1911年（明治44年）に小樽、室蘭、帯広、釧路、常呂郡野付牛村（現在の北見市）にそれぞれ「神田館」という活動写真常設館（現在でいう映画専門館）を建設した人物である[3]。1960年（昭和35年）発行の『旭川市功労者伝』には、エンゼル館が札幌の神田館と同じ年に建てられたとあるが[3]、1913年（大正2年）7月9日の『北海タイムス』の記事によれば、「大正2年」（1913年）に竣工、開業したと報じられている[2]。
1927年（昭和2年）4月22日付『北海タイムス』に同館が出した広告によれば、沼田紅緑監督の『江戸嵐』や富沢進郎監督の『漂泊の人』のようなマキノ・プロダクション製作の新作だけでなく、マキノ映画製作所が1923年（大正12年）に製作した沼田監督の『鮮血の手型 前篇・後篇』のような旧作や、パラマウント映画が1925年（大正14年）に製作したA・エドワード・サザーランド監督の『恋の勝鬨』といったアメリカ映画も、同じ週の番組として上映していた[4]。同年、報知新聞の招待で来日したノルウェーの探検家ロアール・アムンセンが札幌での講演を、同年7月3日、同館で行っている[5][6]。
1953年（昭和28年）の時点で札幌市内の映画館は17館に増加[1]。その後も札幌日活劇場、東宝日本劇場、東宝公楽劇場などが相次いでオープンし競争が激化。エンゼル館は1968年（昭和43年）に閉館した。現在は跡地に、1988年（昭和63年）3月に竣工した「札幌北三条ビル」が建っている。
おもな上映作品
- 『母性の愛』 Just Around the Corner : 監督フランシス・マリオン、パラマウント映画、1921年
- 『江戸嵐』 : 監督・脚本沼田紅緑、マキノ・プロダクション、1927年[4]
- 『漂泊の人』 : 監督富沢進郎、原作・脚本久保為義、マキノ・プロダクション、1927年[4]
- 『鮮血の手型 前篇・後篇』 : 監督沼田紅緑、原作・脚本寿々喜多呂九平、マキノ映画製作所、1923年（同館では1927年）[4]
- 『恋の勝鬨』 : 監督A・エドワード・サザーランド、パラマウント映画、1925年（同館では1927年）[4]
- 『白雪先生と子供たち』 : 監督吉村廉、大映、1950年
- 『あなたと共に』 : 監督大庭秀雄、松竹、1955年
脚注
注釈
- 1953年の映画館（北海道地方） 「消えた映画館の記憶」を参照した[1]。
出典
- 『全国映画館総覧 1953年版』 時事通信社、1953年
- 松波秀子「9050 ガーディナー建築事務所のスタッフ、荒木賢治と上林敬吉について : 日本聖公会の建築史的研究 4」『学術講演梗概集. F-2, 建築歴史・意匠』第1995号、日本建築学会、1995年7月、99-100頁、ISSN 13414542、NAID 110004140558、2020年7月20日閲覧。
- “ヌプンケシ33号”. 北見市 (2002年10月1日). 2012年6月11日閲覧。
- 『北海タイムス』、1927年4月22日付、第2面。
- 『北海道新聞』夕刊、2011年7月28日付。
- “昭和二年” (PDF). 北大青年寄宿舎. 北海道大学. 2012年6月11日閲覧。
参考文献
- 『旭川市功労者伝』、編旭川開基七十周年記念行事実行委員会、発行旭川市、1960年9月