ウルシ
ウルシ(漆、学名: Toxicodendron vernicifluum、英: Lacquer tree) は、ウルシ科ウルシ属の落葉高木。
ウルシ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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Toxicodendron vernicifluum(2009年8月2日) | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Toxicodendron vernicifluum (Stokes) F.A.Barkley[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ウルシ(漆) | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
lacquer tree、Chinese lacquer、 Japanese lacquer-tree、varnish tree、 Japanese lacquer tree |
特徴
葉は3 - 9対で、卵形か楕円形の小葉をもつ奇数羽状複葉で、紅葉する。
果実はゆがんだ扁平の核果で、10月ごろ成熟して黄褐色となる。近似種のヤマウルシと比較して果実に毛が無い。
- ウルシの新芽(開芽時は赤みを帯びる)
- ウルシの若葉とつぼみ
- 黄褐色に黄葉した葉
- 灰白色の幹
分布・生育地
アジアが原産。中国・朝鮮・日本で漆を採取するため古くから広く栽培されていた。特に渓谷沿いなど比較的湿潤な環境に植栽されることが多く、野生化した個体も見られる[2]。
日本には中国経由で渡来したという説がある[3][4]。しかし、中国より古い時代の漆器が日本の縄文時代の遺跡から発掘されており、また自然木と考えられるウルシも縄文時代より日本各地で出土していることから[5]、中国から持ち込まれたのではなく、日本国内に元々自生していた可能性も考えられる。また、採取法の違いなどから、日本の漆器を独自のものとする説もある。1984年に福井県若狭町の鳥浜貝塚で出土した木片を、2011年に東北大学が調査したところ、およそ1万2600年前のものであることが報告されているが、これがいまのところ最古のウルシである[6][7]。
利用
古くから、樹皮を傷つけて生漆を採り、果実は乾かした後に絞って木蝋を採ることができる商品作物として知られており、江戸時代には広島藩などで大規模な植林が行われていた記録が残る[8]。
- ウルシ材は心材色のみが黄色い
- 辺材は白く黒いところは形成層にあった漆が空気に触れた部分
若い新芽の部分は食べることができ、味噌汁や天ぷらにすると美味しく食べられるとも言われるが、後述するようにウルシかぶれが発生する事が考えられるので、食べない方が無難である。
また、「東医宝鑑」においてはウルシを材料とした漢方薬や、薬効に関しての記述があり、本書では固形化したウルシの樹液をじっくり煎って粉末にしたものを「乾漆」として漢方薬の材料として記載している。 このことから、古くからウルシはそれがもたらす薬効が期待され、医学の面でも利用があったといえる。
中国の雲南省怒江では[9]、実の30%を占める油を食用にする[10]。アレルゲンが含まれているためリスクがあるが[11]、2つの方法で克服している。ひとつは加工で、もうひとつは体質である。加工とはまず漆の実を粉砕し、煮詰めてアレルゲンを揮発させる方法である[12]。このあと圧搾し油を得る[13]。このようにして得たウルシの油には蝋の成分も含まれるため、47度以下で凝固するが、これは保存に有利となり、1年はもつ[14]。体質は長い歴史の中で現地の人々が環境に適応し、耐性を得たものである[15]。
ウルシかぶれ
本種をはじめ、近縁種はアレルギー性接触性皮膚炎[注釈 1](いわゆる「ウルシかぶれ」)を起こしやすいことで有名である。これは、ウルシオールという物質によるものである。人によっては、ウルシに触れなくとも、近くを通っただけでかぶれを起こすといわれている。また、山火事などでウルシなどの木が燃えた場合、その煙を吸い込むと気管支や肺内部がかぶれて呼吸困難となり、非常に危険である。
- ウルシにかぶれた腕
ウルシ属
ウルシ属(ウルシぞく、学名: Toxicodendron)は、ウルシ科の属の一つ。
- Toxicodendron acuminatum
- Toxicodendron diversilobum
- ツタウルシ Toxicodendron orientale
- タイワンツタウルシ Toxicodendron orientale subsp. hispidum
- Toxicodendron parviflorum
- Toxicodendron potaninii
- アメリカツタウルシ(ポイズンオーク)Toxicodendron pubescens
- Toxicodendron radicans
- ポイズンアイビー Toxicodendron radicans subsp. radicans
- Toxicodendron rydbergii
- Toxicodendron striatum
- ハゼノキ Toxicodendron succedaneum
- ヤマハゼ Toxicodendron sylvestre
- ヤマウルシ Toxicodendron trichocarpum
- ウルシ(この記事) Toxicodendron vernicifluum
- ドクウルシ(ポイズンシュマック)Toxicodendron vernix
脚注
注釈
- アレルギー反応であって、ウルシオール自体が「毒性分」であるわけではない。
出典
- 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)”. 2011年12月9日閲覧。
- 『樹に咲く花2』山と渓谷社、2000年10月25日、280-281頁。
- 平岡裕一郎, 花岡創, 平尾知士, 渡辺敦史「DNAマーカーを利用して栽培樹木の起源を探る:ウルシやハゼノキは移入種か?」『日本森林学会大会発表データベース』第123回日本森林学会大会第0号、日本森林学会、2011年、M05-M05、doi:10.11519/jfsc.123.0.M05.0、NAID 130005047773。
- 渡辺敦史, 田村美帆, 泉湧一郎, 山口莉未, 井城泰一, 田端雅進「DNAマーカーを利用した日本に現存するウルシ林の遺伝的多様性評価」『日本森林学会誌』第101巻第6号、日本森林学会、2019年、298-304頁、doi:10.4005/jjfs.101.298、ISSN 1349-8509、NAID 130007793895。
- 鈴木三男, 能城修一, 小林和貴「鳥浜貝塚から出土したウルシ材の年代」『植生史研究』第21巻第2号、日本植生史学会、2012年10月、67-71頁、doi:10.34596/hisbot.21.2_67、ISSN 0915-003X、NAID 40019477294。
- 2011年11月6日、第26回日本植生史学会大会で東北大学の鈴木三男教授らのグループが発表
- “1万2600万年前のウルシ展示 県立若狭歴史民俗資料館 社会 福井のニュース”. 福井新聞 (2011年10月14日). 2012年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年12月9日閲覧。
- 「第三章 城下町と近郊農村の産業」『広島市史 第三巻 社会経済編』pp224 昭和34年8月15日 広島市役所
- 美味の起源 - Netflix、「漆油」。1:30-。
- 美味の起源 - Netflix、「漆油」。2:30-。
- 美味の起源 - Netflix、「漆油」。2:55-。
- 美味の起源 - Netflix、「漆油」。3:18-。
- 美味の起源 - Netflix、「漆油」。3:43-
- 美味の起源 - Netflix、「漆油」。4:23-
- 美味の起源 - Netflix、「漆油」。11:55-。
外部リンク
- "Toxicodendron vernicifluum (Stokes) F. Barkley" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2011年12月9日閲覧。 (英語)
- "Toxicodendron vernicifluum". National Center for Biotechnology Information (NCBI) (英語). (英語)
- "Toxicodendron vernicifluum" - Encyclopedia of Life (英語)