イボタノキ

イボタノキ(水蝋の木[5]・水蝋樹・疣取木、学名: Ligustrum obtusifolium)は、モクセイ科イボタノキ属の落葉低木。別名、トスベリノキ[6]、カワネズミモチ[7]。日本各地の山野に自生する。

イボタノキ
イボタノキ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク上群 superasterids
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: シソ目 Lamiales
: モクセイ科 Oleaceae
: イボタノキ属 Ligustrum
: イボタノキ L. obtusifolium
学名
Ligustrum obtusifolium Siebold et Zucc. (1846)[1]
シノニム
和名
イボタノキ(水蝋の木)、
コバノイボタ[1]

分布・生育地

日本では北海道本州四国九州にまで分布する[5][7]。日本国外では朝鮮半島中国から知られる[6]

山野に生え[5]、陽樹であり、明るい林縁、道路そばなどに見られる。山間の崩壊地などにもよく出現する。

特徴

半落葉低木広葉樹[5]。低木で樹高は1.5 - 2メートル (m) 。葉は細かく、枝は放射状に伸びて[8]、あまり分枝しないまっすぐなものが多数並ぶ。その小枝は横向きに伸び、葉がほぼ等距離に多数並ぶので、ちょっと羽状複葉のようにも見える。は灰白色で[5]、新枝には細毛がある。樹皮には白いイボタロウムシが寄生することがある[5]

対生し、長さ2 - 7センチメートル (cm) の長楕円形をしている[5]。はじめは黄緑だが次第に深緑になり、裏面は淡緑色[5]。表面につやがなく、質はうすく柔らかい[5]

花期は初夏(5 - 6月)[5]。本年枝の先に長さ2 - 4 cmの総状花序を出し、ギンモクセイに似た芳香ある白い小さなを密集して咲かせ[6][5][7]、花序先端が垂れる。花は筒状漏斗形で、花冠は長さ7 - 10ミリメートル (mm) の筒状漏斗形で、先は4裂して平らに開く[5][7]

果期は晩秋(10 - 2月)[5]。直径7 mmほどの楕円形の果実がなる[5]。果実は核果で紫黒色に熟す[6][5]

利用

植栽樹に用いられる[9]。樹皮上に寄生するイボタロウムシの分泌する「いぼた蝋」は、蝋燭の原料や家具のつや出し[6][5]日本刀の手入れに用いる。いぼた蝋を家屋の敷居に塗ると、戸の滑りが良くなることからトスベリノキの異名でもよばれる[6]

材はきめが細かく楊枝などを作る。器具の柄などに用いる。薪炭材。

また、ライラックを栽培する場合に、台木として用いられる。そのため、気をつけないと、ライラックを購入して栽培しているつもりで、いつの間にか芽吹いたイボタノキの方を育ててしまい、花色がおかしいと言うことになる場合がある。

イボタノキの蝋を飲むと咳が止まるという伝統的民間療法が長野県阿智村、喬木村などの周辺に残っている[10]

似た植物など

イボタノキ属には7種ばかりある。そのうちでもっとも普通に見られるのは本種以外ではネズミモチ(およびトウネズミモチ)であろう。これ(ら)は常緑で厚く幅広い葉を持つもので、見かけが大きく異なる。それ以外の種はイボタノキにやや似ているが、見ることはより少ない。

脚注

参考文献

  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、59頁。ISBN 978-4-05-403844-8。
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、196頁。ISBN 4-522-21557-6。
  • 山﨑誠子『植栽大図鑑[改訂版]』エクスナレッジ、2019年6月7日、112 - 113頁。ISBN 978-4-7678-2625-7。

関連項目

外部リンク

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