イソアワモチ

イソアワモチ (磯粟餅, 学名 Peronia verruculata)は磯に棲む貝殻をもたない軟体動物で、アワモチ科に属する。カタツムリと同様に雌雄同体で肺呼吸を行う。

イソアワモチ
三浦半島和田長浜の長さ約4cmのイソアワモチ小型種
三浦半島和田長浜の長さ約4cmのイソアワモチ。左が頭部。
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
階級なし : 後生腹足類 Apogastropoda
階級なし : 新生腹足類 Caenogastropoda
階級なし : 異鰓類 Heterobranchia
階級なし : 真正有肺類 Eupulmonata
: 収眼目 [1] Systellommatophore
: アワモチ科 Onchidiidae
: イソアワモチ属 Peronia
: イソアワモチ P. verruculata
学名
Peronia verruculata (Cuvier, 1830)>[2]
和名
イソアワモチ (磯粟餅) [3]
英名
a kind of sea slug
中名 石磺 (shí huáng)

形態

体長約6cm以下の平たいナメクジ状の体を持ち、前方左右の触角の先に眼がある(柄眼:へいがん)。内臓は肉帯(notum)で覆われ、背面の突起の上にも外套眼がある[4]。水中では背面後方の樹脂状えら突起で呼吸し、水上では肛門のすぐ後ろにある呼吸孔から空気呼吸を行う[5][6][7]。イソアワモチ類は、大きさや色などは多様なため外観から種を判別することは難しく、消化腺上の腸管の巻き方のちがいや、遺伝子解析によってイソアワモチ属の種の区別ができる[8]雌雄同体で、肛門のすぐ右に雌性の生殖孔をもち、頭部右側に雄性生殖突起をもつ[7][9]

生態

イソアワモチは、干潮時に岩礁の穴からはいだして藻類を食べたり繁殖行動を行い、水没時までに穴に戻る。春から夏にかけて集団で摂餌し交尾する。交尾の際に、オスとして行動するときは積極的で、メスの役割の時には消極的になる[10]。初夏から秋に、緑藻や紅藻の上にひも状の卵塊を産卵する。イソアワモチのうち房総半島に生息して体調6cm以下の個体群は、丈夫な殻をもって孵化し、2-3日後に殻を脱ぐ。体長10cm程度まで成長する大型の個体群はプランクトン栄養型、比較的大型ではない個体群は卵黄栄養型であり、別種の可能性がある[11]。冬2月には死亡した個体が見られる[12]

分布

房総半島以南の本州太平洋側からアフリカ東岸にかけてのインド-西太平洋の、主に潮間帯の岩礁上に分布する[5][13]。生息する海域によって5つの遺伝子群に分かれる[14]。日本では、イソアワモチは少なくとも2つの個体群が知られており、大型のものは近年房総半島で見られなくなり、大型にならない個体群が優勢になっている[15]福江島以南では10cm程度の大型になる個体が見られる[16][17]

人との関係

沖縄では「ホーミ」、奄美では「コウム」と呼ばれ、みそ炒めにして食用とされる[18][19]

関連項目

脚注

出典

  1. 佐々木 2010 p.103
  2. Peronia verruculata”. WoRMS (2020年10月2日). 2022年6月18日閲覧。
  3. 玉置泰司 (2002年). みずべの生き物図鑑 イソアワモチ”. 2022年6月18日閲覧。
  4. 佐々木 p.103, 189, 247
  5. 世界文化生物大図鑑 貝類, p. 233.
  6. 佐々木 p.186
  7. Dayrat (2020), p. 136.
  8. Dayrat (2020), p. 19.
  9. 濱口.吉岡 (2002), p. 55.
  10. 濱口.吉岡 (2002), p. 55,58.
  11. 片桐・片桐 (2007), p. 39.
  12. 川端美千代ら「B01油壷産イソアワモチ (収眼類) の生活史と卵発生への試論」『Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)』第75巻第1-4号、日本貝類学会、2017年、A11-A12、ISSN 13482955
  13. Dayrat (2020), p. 31.
  14. Dayrat (2020), p. 22-26.
  15. 片桐ら (2007), p. 40.
  16. 背中にも眼が!イソアワモチ”. 福江島の博物誌 (2020年). 2022年6月18日閲覧。
  17. 高木ら (2019), p. 25-27.
  18. イソアワモチ料理”. nami-5963.exblog. 2022年6月18日閲覧。
  19. コウム(イソアワモチ)の調理方法”. あさのBLOG. 2022年6月18日閲覧。

参考文献


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